世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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ショーヴェの映画

 このほどショーヴェの洞窟壁画に関する映画のブルーレイを入手でき、早速見てみました。映画それ自体は今春に公開された時に、映画館にはせ参じて、3Dで見ることができましたが、それがこれだけ早く手元に置けるようになるとは思っておらず、大いなる喜びです。ブルーレイには3Dと普通の2Dが同梱されており、私の持っている装置では、3Dは見られませんが、それでも十分な映画鑑賞となるでしょう。アメリカで発売されたものの輸入版で、私は日本のアマゾンで購入しました。英語版ですが、英語とスペイン語の字幕が出ますので、まあ、内容は把握できるでしょう。ちなみに劇場公開の日本語版では、有名俳優のオダギリジョーさんがナレーションの吹き替えを担当されていたので、そのうち、これも発売されるかもしれません。なお、DVDの場合、アメリカで発売された製品は日本の機器では見られませんが、ブルーレイの場合は、大丈夫でした。
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 映画の内容ですが、Werner Herzogという高名なドキュメンタリー映画作家が、ショーヴェでの撮影許可を得て、洞内に入って、実際に作品を見学したということそれ自体が記録されているという設定で、映像作品としてはきわめて優れているという感想を、私は持ちました。何より、いろいろな手続きを経て、実際に洞窟内部に侵入し、そして限られた時間内で、比類なき洞窟壁画を見て、そして、惜しみつつ、洞窟を出るという、実際の経験がそのまま記録されていることに感銘を受けました。洞内では床面を保護するため、設置された足場に限定されていて、カメラも照明もそこからしか使えず、灯りの揺らめいている様子などが、私自身の経験からしても、きわめてリアルな感じを醸し出しているのでした。芸術作品である洞窟壁画を、フラットな照明で映した、作品集的な趣はありませんが、暗闇で制作されて、そのままの場所に残されている洞窟壁画の、ある意味での実態がそのまま記録されているともいえ、この従来にはない作家の感覚に脱帽した次第です。洞窟壁画に関するこれまでの動画では、作品がニュートラルな照明で、正面から撮られていて、きわめて平面的な印象を与えます。その前後に周囲の状況も映る場合がありますが、ほんの付け足し程度で、実際どのような場所に洞窟壁画が制作されているのかはわかりにくいのがほとんどでした。ハーツォグの場合、足場と撮影時間の制限からの苦肉の策かもしれませんが、正面から撮られることはなく、かえって、洞窟内部の岩面の不規則な形状が如実に記録されていて、「統合」という観点から洞窟壁画を論じている私には、きわめて有用な動画であるといえます。「統合」に関しては、また別の項目で詳しく紹介することになるでしょう。洞内の全作品が網羅されているわけでもなく、同じ作品が繰り返し映るのも、実際の洞窟壁画見学のありように沿っていて、まあ、違うのも見せてくれという気持ちもありますが、リアルな感じです。研究者として実際に洞窟内部に何度も入っているからいえるだけかもしれませんが、まだ、実際に経験されていない皆さんにも、まずは疑似体験としてお薦めできるのではないでしょうか。
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by rupestrian | 2012-07-11 13:34 | 先史岩面画
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