世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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洞窟壁画の地形図

 前回、「統合」ということばを用いましたが、この場でも、少しずつ、この概念について、できるだけわかりやすく説明できればと願っています。ショーヴェの映画でもよく映っていましたが、洞窟壁画をはじめとする先史岩面画は、不規則な形状の場所に制作されているのが重要な側面です。二次元である写真などでは、どうしても平面的に見て、普通の絵画のようにも思われるかもしれませんが、実際は凹凸が激しく、亀裂も縦横に走っているところに線が刻まれたり、色が施されて、かたちが作り出されているのです。この状態をことばや平面図で伝えるのは難しいのですが、自然の大地の表面を思い浮かべていただいたら、わかりやすいかもしれません。自然の地形には、純粋に平面といえる場所は全くなく、それぞれが他のところとは違う、個性的な表情を持っているのです。氷が張っていたり、雪が積もっているなど、特殊な場合は別にして、純粋な二次元平面とは、人間が作り出した人工的な場であり、それが建物の壁や天井、床になったり、絵画を制作するための場所になったりしているだけなのです。
 等高線による地形図というものがありますが、それは、三次元の自然の大地を平面に表すための工夫であり、見慣れれば、どこにどれくらいの高さの山があったり、どれくらいの深さの窪地があったりするのかもわかってくるでしょう。先史岩面画が制作されている場所も、まさに大地と同じ、自然が作り上げた表面であり、等高線による地形図を作成することができます。
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上図は、フランス南西部のペシュ=メルル洞窟の有名な「斑点のある2頭のウマ」という作品のある岩面の地形図で、この洞窟の責任者として調査されているミシェル・ロルブランシェ先生の本に掲載されているのをお借りしたものです。私自身は約20年前にこの図を直接見せていただいて、それもきっかけになって「統合」という造形現象を追求したわけですが、2010年に刊行された本にようやく印刷されたので、ここでも紹介できる次第です。2頭のウマの他にも、多くのかたちが見いだせ、それぞれの輪郭線が記録されていますが、それ以外の細い線は等高線であり、この場所が決して純粋な平面でないことがわかると思います。見慣れてくると、2頭のウマの胴体部分に、現在の我々には関知できないほどのささやかなボリュームのあることがわかり、それがこのウマをこの場所に描かざるをえなかった理由になっているといえるでしょう。2頭のウマはおしりの部分で奇妙な重なり方をしていますが、従来は偶然であるとしか考えるしかなかったこの表現の、存在理由が説明できるようになったのではないかと思います。これも、この地形図が作成されたからであり、私もできれば、すべての洞窟壁画でチャレンジしたいと思っています。しかし、現実には、高価な機器であり、また洞窟内部に持ち込む許可を得ることは難しく、残念ですが、仕方ありません。それに代わる方法も工夫して、私自身は記録調査していますが、これについては、次の機会に紹介したいと思います。
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by rupestrian | 2012-07-19 15:10 | 先史岩面画
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