世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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映画『プロメテウス』

 先行上映された『プロメテウス』を見た。映画そのものに関しては、他のところでも多くの方が言及されているだろうから、ここで特にコメントすることはないが、私自身、テレビのCMで洞窟壁画らしきものが一瞬映ったから見に行ったまでのことであり、宣伝につられて、大枚はたいて、時間も割いて鑑賞した方々は、大いに不満に思われた方が多かったのではないかと、推察する。しかし、商業ベースの芸術表現にいかに多くの聴衆を動員するかも、ある意味では作品の一部であり、うまくやられたというのが偽らざるところだろう。
 私としては、先史岩面画の研究者として、このようなメジャーな映画に洞窟壁画らしきものが取り上げられたこと自体は評価しており、それを見ることができたことは喜ばしいことだったと肯定的に考えている。映画のかなり早い段階で、一瞬出てくる洞窟壁画らしきものは、しかし、発見場面から判断して、あまり洞窟の奥深くにあったようではなく、少し首をかしげるところだった。また2080年代のことのようだが、アイルランドという、これまで洞窟壁画が発見されていないところで見つかったというのも、一興ではある。作品それ自体を見ても、監督のリドリー・スコットや、実際に制作したのであろう美術スタッフも、あまり洞窟壁画に造詣が深いとは思えず、極めて中途半端な扱いだったのは残念なところである。対照的なのが、1996年制作の映画『イングリッシュ・ペイシェント』で、ここでは先史岩面画それ自体が、映画のなかでも重要な位置づけにあり、その作品も新たに作られたものだったが、クオリティが高く、先史岩面画の魅力を伝えているようだった。それに比べると、今回は登場場面もほぼ1秒くらいで、こんなものかもしれないが、専門の研究者としては、もう少し焦点を当ててほしかった気はしている。
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 作品は少し見にくいが、一応凹凸のある岩面がしつらえられていて、画面の右側に約32,000年前とされている、フランス・ショーヴェ洞窟の「3頭のウマの頭部」のいただけないコピーがあり、どういう年代測定方法かわからなかったが、約35,000年前と映画では設定されていたので、それらしい感じを出したかったのかもしれない。中央部には数個の星らしきものを指さす大きな人物像と、その周囲にそれを讃えるかのような人物像の集合があり、もっともらしい雰囲気は醸し出しているかもしれない。この図柄は、古代エジプトなど世界各地の様々な時代の遺跡にも見いだせるという設定なので、そんなものが元々存在しない以上、映画スタッフのオリジナルと見なせるが、私の乏しい経験から判断すると、ブラジル北東部のカピヴァラ山地の作品と雰囲気が似ているので、担当者は色々と調べて、でっち上げたのだろう。以上、クオリティも低く、扱いもひどかったが、テレビCMに使われ、映画にも出てきたので、これは何かと疑問に思って、洞窟壁画に関心を持つ人が少しでも増えてくれれば、ありがたいことだろう。
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by rupestrian | 2012-08-20 14:11 | 先史岩面画
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