世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31


制作か使用か

 前回、「最古の芸術」として、モロッコの「タン・タンのヴィーナス」を紹介しましたが、私自身の見解を改めて述べますと、やはり、これらは自然の偶然の産物であり、たまたま現在の我々の視点から、人物など何らかのかたちに見ようとしているだけではないかと考えています。重要なのは、単純に最古の年代を追い求めることではなく、人間が美術をなすことの意味を考え抜くことではないでしょうか。
 「最古の芸術」をもう一つ見ますと、インドの「ベレクハット・ラムのヴィーナス」はさらに自然石に近く、これは230,000年前~500,000年前という、やはり想像を絶する年代を示していて、ただ古い年代の考古学的層から、それらしいものを見つけ出しているだけではないかという疑問をぬぐうことができません。
a0085337_12323240.jpg

 もちろん、数十万年前の人々が、現在の我々と同じような感性を持っていて、この形の石に、何らかの意味を見いだしていたという主張もあり得るかもしれませんが、芸術学の観点からすると、重要なのは人間がそれを作ったかどうかということに尽きるのであり、どう見ていたかということを現在から推察することにはまったく意味がないのではないでしょうか。ルロワ=グーランによれば、フランスのアルシー=シュル=キュール遺跡でネアンデルタール人により「コレクション」された貝殻などが見つかったとのことですが、これは制作されたものではなく発見されたものであるのにすぎないのであって、ネアンデルタール人の感覚はある程度は認めることはできるが、美術の範疇に入れるべきではない、というのが私の偏狭な意見です。
 「偽石器」というものがあり、これは、自然の石片を人々が用いて、使用痕が認められるというものです。これは例の日本旧石器ねつ造事件とはまったく違う問題で、数十万年前の人々が、何らかの目的で拾った石片を生活に使っただけのことであり、学術的にも意義のある問題です。人間が使用した,あるいは「コレクション」したことも、人間のメンタリティを考えるためにはきわめて重要ですが、制作を基本とする芸術学の観点からは、使用を過度に意味づけることはしない方がよいのではないかと、私は考えています。もちろん、異論も多いと思いますが、古い時代に、それらしいものを見つけて、ただ年代をさかのぼらせるだけでは不毛な結果しか出ないと思いますので、ひと言、補足的に書いてきた次第です。
[PR]
by rupestrian | 2012-10-04 12:56 | 先史岩面画
<< ベドナリク氏 最古の美術 >>