世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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ベドナリク氏

 ここしばらくきわめて古い制作年代の美術作品について言及しているが、それを主導しているのが、オーストラリアのベドナリク(R.G.Bednarik)氏であり、今回はその人物を紹介することで、世界の先史岩面画研究の一端を述べたいと思う。
 ベドナリク氏はヨーロッパのオーストリアで1944年に生まれ、若くしてオーストラリアに移住し、学術的な訓練は受けていないが、オーストラリアに散在する先史岩面画に関心を抱いて、仲間たちとAustralian Rock Art Research Association(AURA)という研究組織を立ち上げた。1984年には学術誌Rock Art Researchを創刊し、年2回の発行で、現在の第29巻まで継続して発行されている。この間、世界で最も重要な学術雑誌となり、これに論文が掲載されることが、研究者のステータスになっているといえるだろう。ベドナリク氏は一貫して、この学術誌の編集長であり、全世界の研究動向を詳しく知るとともに、多くの研究プロジェクトの推進者として、68歳になった現在でも旺盛に活躍されている。
 また、IFRAO(International Federation of Rock Art Organzations)という国際研究組織の結成を提唱し、それは現在に至るまで最も権威のある世界的団体として機能していて、各国の研究組織が加盟しているが、毎年、どこかの国で、大規模な国際学会が開催されている。ベドナリク氏は,世界の先史岩面画研究者からきわめて尊敬されている存在であり、このリーダーなくして,この研究分野の活況はなかっただろう。といっても過言ではない。
 さて、ベドナリク氏は、オーストラリアを基盤としている研究者として、ヨーロッパの洞窟壁画を,一地方の産物として、それほど重視していないのが特徴である。この分野の研究は、他の学術分野と同じく、まずヨーロッパで始められ、それゆえヨーロッパの洞窟壁画が重視されているが、そういう風潮に公然と異議を唱えているのである。その一環か、特に近年はできるだけ古い制作年代の美術作品を世界中で探索しているようであり、その結果、このブログでも紹介した、インドの700,000年前の「盃状穴」などに至ったのだろう。もちろんそういう試みも有意義ではあるが、美術という観点からは、玉石混淆で首をかしげざるをえないところである。ベドナリク氏としては、洞窟壁画の優越性を相対化するために、あえて、自然の産物とも見紛う代物までも持ち上げているのだろうと思われるが、その影響力は絶大で、先史岩面画の美術的側面が軽視されているような気がして、残念である。
 私も親しくさせていただいていて、一昨年には日本先史岩面画研究会主催のシンポジウムにも招聘し、来日を快諾していただいたが、直前になって、個人的な事情で断念されたのは残念であった。かつて、私がフランス研修で滞在することになった時も、ベドナリク氏に報告すると、なぜ日本人研究者がヨーロッパなのかと怪訝な表情をされたことを今も覚えている。
 なお、オーストラリア岩面画研究会(AURA)のホームページを下記に紹介する

http://home.vicnet.net.au/~auranet/aura/web/

a0085337_1854734.jpg


上の写真はAURAのホームページに掲載されている写真を転載させていただいたものである。
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by rupestrian | 2012-10-12 18:17 | 先史岩面画
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