世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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岩面美術

 河出書房新社から9月に刊行された『人類の進化大図鑑』という豪華本を最近になってようやく読んでいたら、途中で「岩面美術」の見開きのページがあり、世界各地の「岩面画」作品がレイアウトされていた。問題は「岩面美術」という訳語で、急いで英語の原書の方を確認したら当然「Rock Art」になっていて、それを「岩面画」ではなく、もちろん我々が撲滅しようとしている「岩絵」でもなく、こういう訳語を採用する考え方に興味を持った次第である。
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 日本語版の監修は、東京上野の科学博物館におられた馬場悠男先生で、ご苦心の末の判断であろうと忖度された。科学博物館では、何年も前に一度洞窟壁画に関するシンポジウムが、スペインの専門家を招いて、開催されたことがあり、私も聴衆として出席し、その後の歓迎会で、ご一緒したこともあった。それで、馬場先生も岩面画という用語にも一定のご理解があるだろうとは思っていた。しかし、「Rock Art」を「岩面画」ではなく「岩面美術」と訳すのは、新鮮な気がしたので、あえて言及させていただくことにした。こういう細かいことにこだわってしまうのは、妙に偏執的で気をつけないといけないが、「art」を「画」とつい訳してしまう傾向が美術研究者にはあるのは、自ら認めなければならないだろう。「美術」とストレートの訳す方が、その存在感を明瞭にして、一般的にも問題を提起できる気がするが、どうしても美術の中の一ジャンルとして位置づけたい気が先立って、美術の一部である「画」という用語を採用してしまうのではないか、と今回自己分析した次第である。もう何十年も「岩面画」ということばにこだわってきているので、今更「岩面美術」とはなかなかいえないが、今回のこの熟考されたであろう訳語に触れて、改めて「岩面画」の存在意義に関しても、考え抜きたいと思った次第である。
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by rupestrian | 2012-12-11 17:26 | 先史岩面画
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