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by rupestrian
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ショーヴェ洞窟壁画の年代(続き)

 年末年始を挟んで、同じ話題を継続することにしたい。しばらく、このブログにアクセスしていなかったので、かなり旧聞に属するが、前回紹介した論文を精読したので、改めて批判的に紹介することにしたい。
 論文の冒頭から4分の3程度は、ショーヴェの洞窟壁画が、従来の様式論的な比較研究から、約32,000年前という極めて古い年代ではなく、もう少し新しい制作年代とされているいくつかの洞窟の作品と同時代ではないかと述べている。これらは、筆者たちの新たな現地調査に基づくデータの紹介ではなく、新旧の様々な研究を総合したものであり、それなりに納得できるものではある。しかし、ショーヴェのAMS法による年代が発表された後では、様式論的な方法意識も見直されているところもあり、少しアナクロ的な印象も否めない。筆者の一人のJean COMBIERは1926年生まれの重鎮であり、新たな年代に踊らされている議論を苦々しく思ってか、アンシャン・レジーム的なものを呼び戻そうとしているようにも思われる。もちろん、100年以上の研究史の蓄積の上に成り立っているパラダイムであり、重厚な論考を軽々しく否定できるものでもない。とはいえ、ショーヴェの多様性に満ちた作例すべてを射程に入れているようでもなく、なぜ、この時期になって、このようなまとめを発表するのかということには、首をひねらざるを得ない。
 一方、論文の最後に展開されている年代論は挑戦的である。ショーヴェの年代はすべてパリ近郊の研究所で測定されており、それだけを根拠に、すべての議論は展開され、私も、疑ってこなかったのは迂闊だったといえるだろう。本来、もう一つ別の研究機関でも測定して、それが同じ結果を示してようやく確定した年代に基づいて、論考が可能になるはずであっただろう。この論文では、パリ近郊の研究所が1996年に測定した、スペイン北部のペーニャ・デ・カンダモ洞窟の32,310BPという年代に対し、アメリカの研究機関が2001年に15,160BPというデータを出した、ということを紹介して、パリ近郊の研究所の信頼性に大きな疑問を呈している。1990年前後のAMS法の確立以降、洞窟壁画の絶対年代は多くがこの研究所で測定されており、その扱う資料が汚染されているのではないかと疑うことも、大いなるタブーへの挑戦であるといわざるを得ない。そして、ショーヴェの再測定の提言をして、この論文は終わっているが、実際それが試みられるかどうかは疑問である。この論文が、フランス語ではなく、英訳され、ドイツの学術雑誌に掲載されたということも、何やら示唆的だろう。学術研究というものも、ある種の政治性を帯びざるをえないところがあり、それも見据えて、理論を構築してゆくことが必要なのだろう。
 なお、下には、参考までにペーニャ・デ・カンダモ洞窟の作品を掲載する。

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by rupestrian | 2013-01-08 12:47 | 先史岩面画
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