世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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「海獣」の解釈

 前回「最古」級の意味に関する続編を予告したが、それにとらわれることなく、別の問題を書くことにしたい。最近、ある展覧会で人類学者の鳥居龍蔵が収集した資料を見る機会があったが、その中で、1899年に色丹島で採集したという「チプ」という船の木製の模型に目が釘付けになった。下は、所蔵している国立民族学博物館のホームページからダウンロードしたものである。

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注目すべきは右の横位置の図像で、「シャチ」と解釈され、千島列島北端のシュムシュ島の船にしるすかたちであると説明されている。千島列島北端から南端の島へ船が到来していて、それを見た色丹島の人々が船の模型に残したと理解すればいいのだろうか。

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ここから、すぐに想起したのが、私が共同研究を行った、北海道余市町のフゴッペ洞窟にある、よく似たかたちであり、それは次のようなものである。

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一見同じものを表しているようにも見えるが、色丹島のものは19世紀末で、フゴッペは、私の持論ではあるが、約1,900年前の作品で、制作時期に関し、極めて乖離している。本来なら、比較のしようのない二者ではあるが、つい思い出してしまったので、ここにも書いている次第である。フゴッペの作例に関しては、一般に「海獣」であるとの解釈がなされていて、私としては、横位置の人物像の可能性もあるのではないかと示唆しているところである。色丹島の「シャチ」にはない、下側の突起がフゴッペの「海獣」にはあるので、私は腕の表現であるとも見なしているわけである。先史美術の解釈は極めて困難であり、すべては仮説の範囲を超えないが、可能な限り証拠をそろえてアプローチすべきであるのは、言うまでもないところである。横位置の人物像という解釈については別のところで詳述しているので、ここでは割愛するが、常に確定していない問題なので、解釈に関しては、似たかたちが見いだされるかぎりは、改めて言及するという姿勢は堅持したいと思う。「シャチ」あるいは「海獣」に関し、下に突起物のある作例をご存じの場合は、是非下記アドレスまで、ご教示いただきたいと願っている。もちろん、他の問題でもどんなアドバイスでも歓迎しているので、よろしくお願いしたい。

ganmenga@gmail.com
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by rupestrian | 2013-02-06 17:50 | 先史岩面画
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