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シャーマニズム解釈の問題点
マカピーです。鬱陶しい話題に終始しましたので、少し気分を変えたいと思います。最近、遅ればせながら、『異次元の刻印:人類史の裂け目あるいは宗教の起源』(バジリコ株式会社)というご大層なタイトルの本を読むことができました。1年前に出版されたのですが、これまで筆者がグラハム・ハンコックという『神々の指紋』で有名なトンでもない人物で、ちょっと手が出ませんでした。この人はフゴッペ洞窟にもやってきて、担当者(モンゴル太郎氏)に、岩面刻画の制作年代がもっと古くならないかと執拗に尋ねたそうです。ハンコックは、先史岩面画にも関心を持っているようで、今回の本も、フランスのペシュ=メルル洞窟訪問記から始まっています。しかし、次いで引用するのはDavid Lewis-Williamsの本であり、そこでは、シャーマニズム解釈が展開されています。簡単に言えば、シャーマンが超自然的なパワーを得るために動物に変身した姿が岩面画に描写されているという考え方で、それは、シャーマンが動物に変身する途中の半人半獣像の存在でも明らかであるというのです。この理論の背景には大脳生理学的議論もあり、かなり難しいところもあります。しかし、近年の積極的な岩面画解釈として一定の影響力を持っており、逆に反論の本も出版されています。
このシャーマニズム解釈をハンコックが引用するというのは、この仮説の怪しさを顕わにすることにもなり、Lewis-Williamsも迷惑かもしれません。しかし、危うい議論であることには違いがなく、私個人としては妥当な展開であろうとも思っています。 Lewis-Williamsの本は今、日本語にも翻訳されているところであり、いずれ出版されることでしょう。この翻訳のイニシアチブは中沢新一氏がとっており、その著書『芸術人類学』(みすず書房)などでもLewis-Williamsの説が詳しく紹介されています。まあ、洞窟壁画をはじめとする先史岩面画の解釈は多くの人々の関心事であり、今現在のトレンドが脚光を浴びるのはいいことだろうと思いますが、それを真に受けるのではなく、批判的に検討することが必要でしょう。 なお、今回は出版物を紹介したということで、写真は省略します。
by rupestrian
| 2009-10-01 17:07
| 先史岩面画
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