世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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作品の状態

マカピーです。ようやく中国の北方に戻りましょう。写真は、内蒙古自治区の烏海市近郊・卓子山遺跡群の毛爾溝(マオエルゴウ)という遺跡の作品ですが、「仮面」と解釈される作品の周囲が四角く白濁しています。これは、複製を作るために型を取ろうとして、シリコンを貼り付けた痕ではないかという意見があり、私もそうではないかと思いました。言語道断なことであり、このように作品を損壊することは犯罪といっても過言ではないでしょう。数千年前に制作されて、その後自然の環境変化の中で若干の風化はあったでしょうが、我々の世代まで残ったものを、密着した型から複製を作りたいという利己的な目的で、台無しにするというのは、本当に情けないことです。まさに、人間こそが、この脆弱な美術作品に対する最強の破壊者であり、文化財を次の世代に、そしてさらに将来に受け渡すためにも、地道な教育が最も重要な文化財保護策であると考えるゆえんです。中国で、そして我が国においても伝統的な「拓本」も同罪であり、岩面および刻線内の情報を、今はまだ解析できないにしても、次代にそのまま残すことこそが、現在の我々にできる唯一のことでしょう。
ここまで書いてきたことは何も「チャイナ・プロブレム」を指摘しているわけではなく、先史美術研究を初期に指導したフランスやスペインでも前世紀初めには、もっと残酷なことをしていることは指摘しなければなりません。フランスでは優美なサケの浮き彫りを、ドイツ人研究者がその周囲にタガネを打ち込んで、えぐり取ろうとして、何とか途中で阻止できたということがありましたし、スペインでも、岩陰の動物像の彩画をはぎ取って、それは現在でもバルセロナの博物館に展示されています。先史岩面画は、まさに制作されたその場所にあり続けていることに、その重要な存在意義があるのであり、いかなる理由があっても、そこから切り離すことは認められません。また、下の写真は、四角い痕跡が残っていますが、これも、周囲の岩面の連続の中に作品があることこそ大切なのであり、それを四角に区切るという発想自体が、作品存在を誤解しているのではないかと疑わざるをえません。我が国のフゴッペ洞窟においても、発見されたばかりの岩面刻画の四角い石膏型を粘土の密着で作成しているのですから、偉そうなことはいえません。
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by rupestrian | 2009-11-18 17:41 | 先史岩面画
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