世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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2012年 08月 07日 ( 1 )

トーテミズム説

 人間と動物の関係を探ることが、洞窟壁画の解釈にもつながるのではないか、という予想のもと、いろいろな学説を検討していますが、先に紹介しました「シャーマニズム説」の他にも、「トーテミズム説」が気になるところです。これは、洞窟壁画研究の初期から提唱されていて、しかし、北アメリカ大陸西海岸、ブリティッシュ・コロンビアにおいて、現在でも制作されている「トーテム・ポール」に表されている考え方が、何万年も前の芸術のも適用されるべきではない、という、ある意味ではまっとうな批判もあり、ほとんど顧みられていない仮説であるといえるでしょう。とはいえ、私は、人間と動物の関係を考えるための基本的な枠組みを示しているアプローチであるとも評価しており、その理由を下記に書くことにします。
 「トーテミズム」とは、私は、「祖先動物崇拝主義」と訳していて、自分がか弱い人間ではなく、ワシやピューマなどの強い動物の子孫であり、今はたまたま人間の姿になってしまっただけだ、という考え方であると解釈しています。これは、20世紀初頭に洞窟壁画研究が始まった時点での、トーテミズム論であり、その後、レヴィ=ストロースの「今日のトーテミズム」などの著作もあり、現在ではより精緻な検討がされていると思いますが、それについては、また別の機会に検討したいと思います。要は、洞窟壁画に描かれているのは、作者たちが祖先として崇拝する動物の姿であり、それを表現することで、自分たちのアイデンティティを確立したのではないかと解釈するのです。この説によれば、動物像は、実在するものでもなく、「シャーマニズム説」がいうところの意識に現れるものの描写でもなく、人々の祖先である、今や存在しない動物の理想像であり、プラトン以来の伝統的な「イデア論」芸術観からは、理解しやすいかもしれません。
 「トーテミズム」の対概念は「ヒューマニズム(人間中心主義)」であり、ヨーロッパのキリスト教的心性からは、動物を崇拝する「異教徒」的な産物として、洞窟壁画を見なす考え方だったのだろうと思います。しかし、たとえば私が生まれ育った極東(非ヨーロッパ)などでは、人間と動物はそれほど隔たった存在ではなく、ある種の親和性から豊かな世界が広がってゆくのではないかと思います。洞窟壁画も、もちろん自然の中で、どう猛な動物たちに囲まれて、何とか生き延びていた人々が、その知恵のあり方の中で、実現したものであり、もちろん、トーテミズム説がそのまま当てはめられるわけではありませんが、今後とも、人間と動物の関係を突き詰めてゆきたいとかが得ています。
 なお、次の写真は「トーテム・ポール」の例ですが、その意味などについては次の機会に書いてみたいと思います。
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by rupestrian | 2012-08-07 14:43 | 先史岩面画