世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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2012年 09月 25日 ( 1 )

最古の美術

 ここしばらく、今月末に締切の論文を書いていたので、このページに取りかかる余裕がなかった。その論文は、来年3月末には印刷されるので、詳細は割愛するが、ホモ・サピエンスはその種に固有の能力として美術制作することを有しており、単純な形態から、複雑なものへと美術を進化させた、という考え方を批判して、美術と明確に定義される約32,000年前の制作とされる、ショーヴェの洞窟壁画が、なんら前触れもなしに、突如として出現した、ということは理論的にあり得ることを主張した論考である。
 論文を書く上で、世界の文献資料を整理してゆく中で、ウェブ上に「Oldest Art:The Top 50」というページのあることを確認した。

http://www.visual-arts-cork.com/prehistoric/oldest-art-top-50.htm

 これによると、最古の美術はインドの盃状穴(cupule)で少なくとも290,000年前、最大7000,000年前にまでさかのぼりうるという主張をしている。途方もなく古く、とうてい受け入れることはできないが、盃状穴というのは、円形の輪郭の、中央に向かってくぼんでいるかたちで、もちろん、これを美術の重要な一部として評価する立場もあるだろうが、私は、実用的な目的もあるのではないかとも考え、美術と見なさない偏狭な立場を貫くなら、この年代もありかなとも思ってるところである。問題なのは、第4位とされているモロッコの「タン・タンのヴィーナス」という作品で、これには何らかの造形意志も認められるのではないか、と私も認めざるをえないところである。年代が200,000年前ないし500,000前ということで、これに関しては、絶句せざるを得ない。もし、この年代設定がそれほど事実とかけ離れていないとするなら、やはり、何らかの自然現象が石塊に作用した結果、頭部と胴部を区切る線、また、胴部と脚部を区切る線が、偶然生じただけで、それをつい女性の人体に見立てているだけではないかと、断じざるをえない。
a0085337_17221526.jpg

他にも中央の縦線など、偶然にしてはよくできすぎているという印象を持つが、まあ、あまりにも孤立している現象なので、今後類例が発見されるまでは、決定的な議論は避けたい、という慎重な姿勢を固持することとしたい。
 この「Top 50」は他にも話題満載なので、今後とも批判的に紹介してゆくつもりである。
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by rupestrian | 2012-09-25 17:30 | 先史岩面画