世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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2012年 12月 03日 ( 1 )

中国最古の線刻

 Sci-News.comという科学関係のホームページを見ていたら、約30,000年前の線刻のある石灰岩の石片が発見されたというニュースが載っていた。

http://www.sci-news.com/archaeology/article00755.html

 もとは今年の7月にChinese Science Bulletin という英語の雑誌に掲載された論文で、なぜか、今頃になって紹介され、私もようやく知った次第である。石片が発見されたのは中国の寧夏回族自治区の「水洞溝遺跡」であり、私も、2009年に近くの賀蘭口遺跡に先史岩面画を共同研究で調査に行った際に、訪れたことがあった。元々、洞窟壁画研究を打ち立てたフランスのブルイユなどが最初に調査した遺跡であり、研究史的な関心もあって、研究仲間と立ち寄ったのである。保護屋が建設中で、遺跡そのものは見ることができなかったが、遺跡を中心に、明代の城郭遺跡なども含めて史跡公園として整備されていた。現在では、工事も終わり、快適に見学できることだろう。

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 1980年代の発掘で出土した石片を改めて観察して線刻を確認したとのことである。放射性炭素年代測定法などで、石片が出土した層の年代は約30,000年前と確定し、これは妥当なところかもしれない。石片は長さ約7cmで、肉眼でも8本の線が刻まれていることがわかる。論文では、様々な機器を駆使して、画像分析の結果、人為であることを確認している。

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 上の写真は、上記論文の図版を転載したもので、技術的問題で、上下に分かれてしまって、確認しにくいことをお許しいただきたい。あまりにも断片的で、何らかの形象を意図したものとは認めがたい。また、明確な造形意志も確認しがたく、やはり、石灰岩の断片に機械的に繰り返されたストロークが痕跡として残っただけではないか、と考えるしかないのではないだろうか。人為的な線刻を芸術と見なすか否かは、やはり、それぞれの研究者の芸術観にもとづく、主観的判断に基づかざるをえないところがあり、私は偏狭なようだが、先に紹介した南アフリカの約70,000年前のブロンボス出土オーカー片も含めて、造形意志の産物とは思えないのである。もちろん、地元で発掘した研究者の努力は尊いし、ナショナリズム的見地から、自国で発見されたものがより古い美術作品であると主張したい気持ちもわからないわけではないが、ただ古さを競争するだけではなく、外部からの視点も導入する必要があるだろう。論文それ自体はデータ提出など堅実なものであり、今後精読して、より詳しく検討したい。
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by rupestrian | 2012-12-03 16:55 | 先史岩面画