世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30


カテゴリ:未分類( 4 )

アートの脳科学

 このほど、新刊の川畑秀明さんという方の『脳は美をどう感じるか:アートの脳科学』(ちくま新書)という本を読んでいて、洞窟壁画も扱っておられるので、何気なく読んでいると、私が15年以上前に書いた論文が引用されていて、驚いた次第です。洞窟壁画が「利用か投影」かという節で、私が「統合」と呼んでいる現象を論じておられる部分です。私の論文は、私が学生の時に助教授だった先生の退官を記念しての論文集に掲載したもので、私の現在にいたる「統合」論の序説的性格を持っているものです。個人的には、フランス語の文献のみを注記したスタイリッシュな構成で、私なりに密度も濃く、意識の中では代表作の一つと考えているもので、それが引用されているのは感慨深いものがありました。発行部数が少なかっただろう学術書の一論文を丁寧に読んでいただいているだけで感謝であり、ここで紹介して、多くの方に手を取っていただければそれでいいのかもしれませんが、つい、研究者の悪い癖で批判的なコメントをしてしまうことをご容赦ください。

a0085337_1482875.jpg


 川畑さんは認知心理学がご専門のようで、脳科学を武器にしてアートに迫ろうとされているようです。これまで、心理学の立場から美術を論じようとする試みは枚挙にいとまがなく、特に洞窟壁画に関しては、あまり資料がないこともあり、多くの議論が展開されてきたようです。先に紹介した、イギリスのホジソンさんも、心理学の立場から、「見立て」を「Seeing-in」と理解して、まさに「統合」を論じようとしています。まだ40歳にもなっておられない、新進気鋭の川畑さんの本では、アートの対象は多岐にわたっていて、自らの芸術体験を出発点として、それぞれの作品や作者に対してしっかりと調べられて、現時点での脳科学的観点からの芸術理解が的確にまとめられていると思われました。そういう点では、以前批判しました、トンデモナイ『洞窟のなかの心』とは一線を画していて、読んでも損はない本でしょう。
 私自身は、細かいことにこだわってしまうのですが、美術史を立脚点としていて、できるだけ「見えるもの」だけを根拠にして,小難しくいえば「現象学的」方法意識に基づいて、洞窟壁画などを論じてきています。「心理」のような「見えないもの」に体系性を認めて、その発露としてアートを理解しようとする試みもわからなくはないのですが、やはりまだまだ人間の心の中は「見えないもの」ばかりで、美術も例えば「病跡学」が決めつけるようには、人間の内的な状態の自働的な出現物ではなく、現実社会の中で奮闘するアーティストの極めて複雑な要素を総合化した結果の産物であり、「見えないもの」と「見えるもの」のギャップは依然として大きいようです。脳科学も、もちろん世界の最先端の研究者が日々研鑽されている分野ではあるでしょうが、まだまだ「見えないもの」が多く残っているのではないでしょうか。もちろん「見えないもの」をできるだけ「見えるもの」にしていくのも、研究の大きな目的であり、芸術理解もじっくりと進めていただきたいものだと願っています。
 もうひとつ、細かすぎることに難癖をつけるのですが、引用されているリュケやブルイユの文言は、私が上記論文の中で、正確な感じを醸し出すために、あえて生硬な訳文にしたものをそのまま使われていて、それを紹介していただいたことは評価しますが、ブルイユの本も主要参考文献に記されておらず、私の印象では、フランス語の原典に当たっておられないのではないかという危惧を抱きました。もちろん、私の訳文を信頼していただいてのことでしょうが、やはり、文献全体は無理でも、引用箇所は,一度原文に当たるべきではないかと、アカデミズムの一端に身を置く者として、思いました。川畑さんだけでなく、誰からでも私にお問い合わせいただければ、いつでも資料をお送りするつもりですので、よろしくお願いいたします。
[PR]
by rupestrian | 2012-10-22 15:08

「岩絵」の問題

マカピーです。しばらく、用語に関し厄介な問題があって、更新できませんでした。何度も書きますが、エジプトの論文を仕上げて、改めて用語の問題が気になって、NHKの担当者に11月の放送では、教育チャンネルということでもあるので、「岩絵」ではなく、「岩面画」の方がよいのではないかと提案してみたのですが、どうも手応えはあまりよくありません。
小さなことのようですが、会の名称にも関わりますので、以下、少し長くなりますが、こだわってみたいと思います。そもそも、このブログのアドレスにはrupestrianを用いていますが、これは先にも書いたとおり、「岩の面の」という意味の、よほど大きな辞書でもない限り載っていない英語であり、元々はフランス語などのラテン語系の言葉です。フランス語で「岩面画」は「l'art rupesre」であり、それがアングロ系の言語に訳されたときに、英語では「rock art」と単純化されてしまい、それがそのまま漢字圏の中国語などで「岩画」という言葉になったのだろうと思います。「岩絵」もおそらく、英語からの「直訳」的な言葉であり、対象の重要な側面を見落とした、不十分な用語であると、専門的に学ぶ者としては、常に問題意識を持っていました。やはり、下の、アルタミラ洞窟の天井画に見られるとおり、「岩」の不規則な形状の「面」に制作されたことそれ自体がまさに本質的なことであり、類似のものも含んで何でもありというのではなく、厳しく峻別してゆきたいと考えています。
NHKをはじめとするマスコミなどがなぜ「岩絵」という用語を好んで使うのか、その理由はわかりません。それは日本語の辞書にも載っていない言葉であり、(「岩面画」や「岩壁画」は載っている)俗称というしかありませんが、多分、言葉の音の響きが快いからかもしれません。これはこれで結構な研究対象の問題になるかもしれません。
以上、鬱陶しいことを書いてきましたが、切にご容赦ください。ここから派生する他の用語についても、追い追い書いてゆきたいと考えています。

a0085337_1150322.jpg

[PR]
by rupestrian | 2009-09-17 11:51

スウェーデンのパンフレット

マカピーです。今日は、枝幸の社会教育委員の方から下に写真を載せましたスウェーデンの岩面刻画遺跡のパンフレットを送っていただきました。ご本人も一つしか持っておられない資料ですが、私が持っていた方がいいだろうと譲っていただいたものです。作品写真が下記のアドレスにありますので、ご覧ください。
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:N%C3%A4mforsen-Petroglyphs.jpg
私も今まで知らなかった遺跡ですが、これも、シンポジウムを開催していただいて、多くの皆様と出会う中で、枝幸町の姉妹都市であるスウェーデン中部のソレフテオ市にある遺跡のことを知ることになって、縁というものを感じた次第です。
a0085337_15172211.jpg

[PR]
by rupestrian | 2009-08-28 15:18

岩面画研究会のブログを立ち上げました

 マカピーです。このたび、先史岩面画に関するブログを立ち上げることにしました。北海道余市町にあるフゴッペ洞窟の岩面刻画を皆さんと共同研究して以来、シベリア、フランス・スペイン、そして韓国などへ共同調査に行ってきましたが、その仲間たちである皆さんと普段から情報交換できないかとかねがね考えていまして、とりあえずはブログというかたちをとろうと思った次第です。ブログの名前は堅めに「日本先史岩面画研究会」としましたが、もちろん気軽な場所ですので、積極的にご参加ください。
 先史岩面画とは何かなどについては、折々このブログにおいても述べてゆくつもりですが、ジャンルの性格上、とんでもないアプローチもあり得ますので、とりあえずは、学術的な指向を持っていただける方に限定して、書き込みなどをお願いしたいと思っております。
 なお、このブログのURLにあるrupestrianとは「岩面画に関心を持つ者」という意味の英語であり、このブログに集う皆さんもルペストリアンを名乗っていただければいいのではないかと思います。、
 以上、まずはブログ開設のご挨拶といたしまして、今後毎日のように書いてゆくことにしたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
a0085337_14574993.jpg

スペインのラス・チメネアス洞窟の牡ジカ
[PR]
by rupestrian | 2006-09-15 19:59