世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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カテゴリ:先史岩面画( 66 )

洞窟壁画・最古の年代で再開します

 この場所に最後に書いたのは2年半近く前で、再開するのもどうかという気がしていましたが、本日大きなニュースが入ってきましたので、これをきっかけに、これからはゆったりと、週一くらいのペースで投稿できればと思っています。日本先史岩面画研究会の共同研究による活動は、この3月で4年間にわたった科研が終わり、一段落しましたので、これからは、このブログを維持することで研究会活動の一端にしたいと考えております。
 さて、昨日、ある新聞社から電話があり、Science6月15日号に出る論文に関し質問されました。ウランを用いた年代測定で、スペイン北部のエル・カスティージョ洞窟の「赤い円盤」から41,400±570というきわめて古いデータが出たという論文です。これまでは木炭などの有機物からしか年代測定できなかったのですが、この「ウラン系列年代測定法」では、原理の詳細は割愛しますが、作品制作後に生成した鍾乳石の年代が測定できるので、これまで年代のわからなかった赤い顔料による作品も測定できることになります。同じ洞窟の手形からは37,630±340というデータも出ており、驚くべき古さです。有名なアルタミラ洞窟、大天井画の部屋の、少し保存状態のよくない部分のウマの輪郭線からは、22,110±130という数値が得られ、これは従来考えられていたよりも7,000年以上古い年代で、これをどう解釈すべきか悩ましいところです。科学的年代測定法を専門にしていない立場から放言するなら、今回のデータは7,000年ほどの誤りがあり、エル・カスティージョの赤い円盤も34,000年前とするなら、まだ納得できるところかもしれません。これでも、今まで最古とされている南仏ショーヴェの32,000年よりも2,000年も古くなり、驚くべきニュースとなります。
 もし、41,400年という年代が正しいのであれば、もっと重大な問題が提起されてしまいます。従来、洞窟壁画の担い手であるホモ・サピエンスがヨーロッパ西部に到達したのは約40,000年前頃と考えられており、今回の論文の末尾でも示唆されているとおり、その前から居住していたネアンデルタール人が作者の可能性も出てくるということです。抽象的な形態であろうと、象徴的な表現行為はホモ・サピエンスに限られているという説が有力であり、もし、ネアンデルタール人が赤い円盤を制作したとを認めるなら、大げさに言えば、人間とは何かという大きな問題にも関わってしまうのです。今回の論文では、ホモ・サピエンスのヨーロッパ西部への到達を41,500頃と見積もっており、ぎりぎりホモ・サピエンスの関与も考えられなくはない、微妙なところです。私は、芸術学を専門とする研究者として、芸術をホモ・サピエンスに固有なものであるという論陣を張っており、今回の論文を深刻に受け止めざるを得ません。
以上、新聞社からいただいた、雑誌発行前に報道機関に提供された論文からの第一報として書きました。今後もこの場で、この問題を追及し続けたいと思っていますので、コメントなどよろしくお願いいたします。要約は下記をご覧ください。
http://www.sciencemag.org/content/336/6087/1409
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この写真は私が1992年に訪れた時に撮ったエル・カスティージョの写真で、左側の格子の向こうに洞窟の広い入り口部分があります。
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by rupestrian | 2012-06-15 14:54 | 先史岩面画

サハラ砂漠の花

マカピーです。そろそろ1月も終わりというのに、今年になって、まだ2度目の投稿です。もはや風前の灯火ですが、細くとも長くやっていければと願っているところです。
昨夜は、NHK教育テレビの「ETV特集」で、昨年5月に放送された、サハラ砂漠の先史岩面画遺跡の番組の拡大90分版が放送されました。ご覧いただいた方も多いかと思いますが、まあ、出演者としては、手放しでは喜べない内容ではなかったかと考えているところです。遺跡に至るまでの道行きが長く扱われていて、それはそれで、一般的にも興味深い内容だったかもしれませんが、研究者としては、その時間に作品を紹介していただいた方がよかったのではないかと思いました。とはいいつつ、下の写真は、番組でも取り上げられた砂漠の花であり、まあ、あまりにも珍しく、かえって凶兆ではないかというおそれもありますが、こういうものに出会えるというのが、フィールドワークの醍醐味でしょう。
遺跡の作品の前では、出演者3人で様々なことを語り合ったことを思い出します。番組で使用されたのはその一部であり、もっと良いことを言っていたはずとも思いますが、それは制作者の取捨選択ですから、出演者としては何も主張できないのが残念です。とにかく、NHKの方針として、放送前に番組を、出演者を含めて部外者に見せないということで、何も介入できません。有識者の監修も求めず、それだけ、自信があるのかもしれませんが、単なる素材にすぎないともいえる出演者としては、どういう扱いをされるのか、不安なところです。今回の放送では、洞窟内部の記念写真にラスコーという字幕が出ていましたが、もちろん、ペシュ=メルルの間違いであり、勘違いによるケアレスミスも、事前に外部のチェックを受ければ、客観的な目から見つけやすくなるでしょう。
番組の評価に関しては、それこそ視聴者それぞれの判断にゆだねなければなりませんが、先のNHKスペシャルよりは、改善されているところもあるでしょう。用語に関しては、「岩絵」は使わないようにして、一度だけですが、字幕で「岩壁画」「岩面画」が紹介されたのは、評価できるでしょう。古代エジプト文明との関連づけも、かなり薄められていますが、まだまだ残っていて、まあ、同じ制作者の作品ですから、異なった視点を求めるというのも無理なところでしょう。他にも、まだまだ指摘すべき事は満載な気もしますが、それはまた次の機会に譲りましょう。
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by rupestrian | 2010-01-25 14:20 | 先史岩面画

テレビと先史岩面画

マカピーです。遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年も始動が遅くなり、どういうペースになるかわかりませんが、よろしくお願いいたします。さて、早くも、明日1月9日(土)の放送になりますが、午後9時からTBS系チャンネル『世界ふしぎ発見』という番組で、エジプトの先史岩面画が取り上げられることがわかりましたので、お知らせいたします。昨年2月に私も赴き、5月10日(日)にはNHK総合テレビの「NHKスペシャル」で放送された同じ場所に、民放も取材にいったということで、もちろん私はノータッチですが、どういう切り口で紹介するのか楽しみにしています。最近は、以前よりも日本のテレビで先史岩面画が紹介されることが多くなっているようで、それはそれで、有意義なことだと、専門に学ぶ者としましても、喜んでおります。先の私も出演したNHKの番組は、まあ、サハラ砂漠の先史岩面画を古代エジプト文明と結びつけようとして、無理な展開もありましたが、取り上げていただいたことをよしとして、「岩絵」という俗称を連発されても、まあ貴重な機会になったとは評価しております。明日の「世界ふしぎ発見」はより娯楽的なクイズ番組ですから、もちろんあまり期待できませんが、人気番組で扱ってもらえることで納得すべきでしょう。また、少し先になりますが、1月24日(日)には午後10時から11時30分まで、NHK教育チャンネルの『ETV特集』で、昨年5月の50分の番組の拡大90分版が放送されることになりましたので、これもお知らせいたします。先史岩面画という、ある意味地味な研究対象が、メジャーな放送に現れることだけで、これまでは満足してきたきらいがありますが、今後は学術的な質も維持していただけるよう、制作者にはお願いしてゆきたいところです。下の写真は私が撮ってきたサハラ砂漠の写真です。あえて、先史岩面画ではない画像にしてみました。
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by rupestrian | 2010-01-08 17:39 | 先史岩面画

年の瀬に

マカピーです。どうも、ブロガーになりきれないまま、2009年も終わりに近づこうとしています。今年は、春にエジプトに行ったり、秋に中国に行ったり、初めての先史岩面画作品も見ることができ、充実した1年になったのではないかと思っております。このブログも本格的に始めたつもりですが、なかなか軌道に乗らないまま、来年はどうなるのか、自ら心配しております。著作権という、重要ではあるが、結構厄介なものがあり、基本的に自分が撮った写真しか載せられないのが、こういう美術系ブログの一つの制約とはいえるでしょう。まあ、これまでいやほど撮りためている画像がありますので、それを徐々に出していけばいいのかもしれませんが。
さて、年末に、1冊の本を読みましたので、紹介いたします。青柳正規『人類文明の黎明と暮れ方』(興亡の世界史00)講談社、2,300円(税別)という本で、表紙にペシュ=メルル洞窟の「斑点のある2頭のウマ」がデザインされて、書店でも目につくかもしれません。400ページ近い全体の、約20ページが洞窟壁画に充てられていて、まあ、それなりに取り上げていただいているという感じです。もちろん、専門に研究している者から見れば、情報の出所が限定的で、議論の不十分な箇所もあるような気がしますが、それよりは、こういう著者にも関心を持っていただいているということをよしとすべきなのかもしれません。青柳先生は、東京大学の美術史講座主任教授を長らく務められた、古代ローマ文化の専門家であり、イタリアでは実地に発掘調査もされています。日本学士院会員という、研究者としては、功成り名遂げた方であり、そういう先生が、洞窟壁画をどう捉えておられるのかというのも興味深いところです。今回も、本の紹介ということで、画像は省略いたします。
では、皆様よいお年をお迎えください。
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by rupestrian | 2009-12-28 14:30 | 先史岩面画

メーリングリスト

マカピーです。どうもこのページを更新する習慣が付かないまま、1週間以上がすぎてしまいました。日々、先史岩面画に関わって生活しているのですが、それがなかなか投稿にまでは至りません。現在後期ですが、木曜日は、学部の3年生に洞窟壁画の講義をしているので、毎週提出されるレポートを読んでも、色々なことを考えさせられるのですが、それをどこまで披露していいものかどうかも、考えあぐねるところです。
話変わって、私はRock Art のメーリングリストに長らく参加していて、英語とスペイン語が使われているリストで、私は1度も投稿したことがありませんが、折に触れて、たのしんで眺めたりしております。日本先史岩面画研究会会員の皆様にも、参加していただければ、今のトレンドがわかったりしますので、おすすめいたします。最近は、ある本の批評が投稿されて、それに対する議論が喧々囂々展開されました。下に紹介します本の書評が「対人攻撃的(これの原語はad Hominemという初めて見たことばで、ラテン語をそのまま使っているようです)」だと非難され、もっと内容を論じろとか、元々くだらない本だからそれでいいとか、まあ、世界各地の多士済々が意見を表明するような場であるといえるでしょう。今年出たばかりの本で、私もまだ読めていませんが、ぜひ取り寄せなければならないと思っているところです。今回も、本の紹介ということで、画像は省略いたします。
Cave Paintings and the Human Spirit: The Origin of Creativity and Belief." David S. Whitley. Prometheus Books, Amherst, New York; 2009.ISBN 978-1-59102-636-5.
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by rupestrian | 2009-12-10 17:07 | 先史岩面画

上黒岩岩陰遺跡

マカピーです。この週末には愛媛県に行って、山中の上黒岩岩陰遺跡に行ってきました。この遺跡からは約14,500年前の層から線刻のある十数点の礫が1962年以降に発見されており、女性が表現されているという解釈から長らく「ヴィーナス」とも称されてきました。下の写真は、フォーカスがかなり甘いですが、その1点を遺跡に隣接する展示室で撮影したもので、実物は千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館所蔵ですから、レプリカです。最近刊行された大部の報告書では、遺物番号2が振られており、「長い髪の毛」、「両乳房」そして「女性器および陰毛」が表現されているという解釈もあります。今のところそれに同意できそうですが、世界のどこにも類例がありませんので、表現の目的などはなかなかわかりません。
私がこの線刻のある礫を、レプリカであろうと、見たのは初めてであり、このような貴重な先史美術が四国の山中の遺跡で発見されていたことに感銘を受けました。現場にもはじめて行きましたが、谷あいの川のほとりにあり、1万年以上前も、非常に生活しやすい場所だったのだろうと実感しました。ただし、遺跡そのものは、覆い屋の屋根を工事されていて、養生のためか、層位がブルーシートで覆われていて、実際の発見現場を目にすることはできませんでした。事前の情報収集不足のためですが、まあ、もう一度来なさい、と作者たちが言っているようにも思い、再来を期した次第です。
それにしても、この小さな礫はいったい何の役に立っていたのでしょうか。写真の作品で高さ4.5cmで、一説には、女性が出産時に握りしめていたという考えもありますが、まあ、それも含めて、色々と考える事が、先史美術を前にする醍醐味といえるでしょう。
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by rupestrian | 2009-12-02 17:07 | 先史岩面画

ヴァンダリズム

マカピーです。このブログでは、先史岩面画そのものに加えて、先史岩面画に対する人々の対応などを書いたりもしていますが、こういう短い文章という場では、その方が扱いやすいという面はあるでしょう。それで、今回は「ヴァンダリズム」についてです。「芸術破壊行為」と訳しますが、元々は古代ローマに侵入して、その文化を破壊したとされる「ヴァンダル人」に由来することばで、彼らにすれば、なぜこのような不名誉なことに自分たちの名前が残され続けているのか、首をかしげていることでしょう。
さて、下の写真は、ブラジル北東部のピアウイ州にあるサリトレ遺跡群の一つの岩陰にある作品です。右に4本の平行する垂直線、左には両腕を挙げた人物像、2本の平行線、そして、内部が何本もの平行線で充填された細長い四角形がありますが、左の3つのかたちには、白い部分が見えます。写真ではもり上がっているようにも見えますが、実際は、作品を礫で打ち欠いた痕跡であり、まさにヴァンダリズムの現場です。無惨極まりない状態ですが、どういう経緯でこのようなことが起こってしまったのでしょうか。「犯人」は特定されているようですが、複雑な事情が絡まっていて、検挙されてはいません。それはなぜなのでしょうか。
ピアウイ州は世界的にも先史岩面画の集中している地域の一つであり、今年6月には国際学会も開催されました。この地域は、早くも1991年に「セラ・ダ・カピヴァラ国立公園」として世界文化遺産に登録されており、それはこの地域に分布する先史岩面画の存在によってです。しかし、この地域のすべての遺跡が登録されたわけではなく、詳しい事情は私も知りませんが、なぜか外された部分もあったのです。写真の岩陰はサリトレという土地にあり、独自のデフォルメされたかたちが印象的な作品が多く見いだされています。世界文化遺産の範囲外であり、「犯人」は地元の青年だとのことです。その動機ですが、自分の誇りにしていた作品が、なぜか世界文化遺産から外され、その疎外感から、一種の自傷行為と解釈できるのでしょうか、作品を打撃したとのことでした。ここには、簡単にはうかがい知れない人間精神の深淵も垣間見えるようであり、安易に言及すべきではありませんが、ユネスコ世界遺産という日の当たる場所もあれば、そのすぐそばで、かえって闇に沈む所もあるということは、忘れてはならないでしょう。
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by rupestrian | 2009-11-24 19:30 | 先史岩面画

ホピの「予言の岩」

マカピーです。今回は時事ネタに寄り道してみます。マヤの人々のカレンダーが2012年12月21日で1サイクルが終わることにこと寄せて、「2012」というトンでもない映画が公開されるとのことですが、その関連番組を何気なく見ていたら、何と先史岩面画が登場してきて、非常に驚きました。しかも、前に女性誌の記事を紹介したときと全く同じ作品を取り上げていて、2度ビックリしました。北アメリカ大陸の先住民の一つである、ホピの人々のテリトリーで発見されている作品です。非常に流通している画像なので、著作権はとりあえず無視して、下に転載します。先の日本人画家は、これを見ると人生の行くべき道がわかるなどとおっしゃっていて、2012年がらみでは、人類に選択肢が二つあって、上の道を進めば、ジグザグ線になって、これは滅ぶことを意味しているとのことです。下は、危機を自覚して、正しい選択をすれば、滅亡を回避できるとのことです。まあ、芸術作品の解釈は自由なものかもしれず、何を言っても別に誰の迷惑にもならないかもしれませんが、、ちょっと度が過ぎるような気がします。この作品も、ホピの人々の直接の先祖が制作したものではなく、民族移動の結果たどり着いたところにあったというかたちで、まあ、先住民による神話的解釈という、それはそれで傾聴すべき内容ではありますが、それを時流に乗って針小棒大な解釈へと展開することは許されることではないでしょう。これも先史岩面画研究がまだ世界的に確立していない結果、このようなトンデモ勢力に言及されてしまうのかもしれず、自戒のきっかけとして、あえて取り上げた次第です。
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by rupestrian | 2009-11-20 13:26 | 先史岩面画

作品の状態

マカピーです。ようやく中国の北方に戻りましょう。写真は、内蒙古自治区の烏海市近郊・卓子山遺跡群の毛爾溝(マオエルゴウ)という遺跡の作品ですが、「仮面」と解釈される作品の周囲が四角く白濁しています。これは、複製を作るために型を取ろうとして、シリコンを貼り付けた痕ではないかという意見があり、私もそうではないかと思いました。言語道断なことであり、このように作品を損壊することは犯罪といっても過言ではないでしょう。数千年前に制作されて、その後自然の環境変化の中で若干の風化はあったでしょうが、我々の世代まで残ったものを、密着した型から複製を作りたいという利己的な目的で、台無しにするというのは、本当に情けないことです。まさに、人間こそが、この脆弱な美術作品に対する最強の破壊者であり、文化財を次の世代に、そしてさらに将来に受け渡すためにも、地道な教育が最も重要な文化財保護策であると考えるゆえんです。中国で、そして我が国においても伝統的な「拓本」も同罪であり、岩面および刻線内の情報を、今はまだ解析できないにしても、次代にそのまま残すことこそが、現在の我々にできる唯一のことでしょう。
ここまで書いてきたことは何も「チャイナ・プロブレム」を指摘しているわけではなく、先史美術研究を初期に指導したフランスやスペインでも前世紀初めには、もっと残酷なことをしていることは指摘しなければなりません。フランスでは優美なサケの浮き彫りを、ドイツ人研究者がその周囲にタガネを打ち込んで、えぐり取ろうとして、何とか途中で阻止できたということがありましたし、スペインでも、岩陰の動物像の彩画をはぎ取って、それは現在でもバルセロナの博物館に展示されています。先史岩面画は、まさに制作されたその場所にあり続けていることに、その重要な存在意義があるのであり、いかなる理由があっても、そこから切り離すことは認められません。また、下の写真は、四角い痕跡が残っていますが、これも、周囲の岩面の連続の中に作品があることこそ大切なのであり、それを四角に区切るという発想自体が、作品存在を誤解しているのではないかと疑わざるをえません。我が国のフゴッペ洞窟においても、発見されたばかりの岩面刻画の四角い石膏型を粘土の密着で作成しているのですから、偉そうなことはいえません。
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by rupestrian | 2009-11-18 17:41 | 先史岩面画

花山

マカピーです。しばらく更新ができませんでした。まだまだ習慣化しているとは言い難いところです。もう一度中国戻ることにしますが、すぐに北方ではなく、一度ヴィエトナム国境に近い広西チワン族自治区の「花山(ファシャン)」遺跡の作品を見ることにしましょう。銀川でも、賀蘭山遺跡群が世界文化遺産になるかどうか志向されていましたが、そのライバルと認識されていたのが、花山でした。下の写真は、川縁の大きな岩壁一面に制作された彩画の一部ですが、独特の両腕両脚を広げたポーズをとっている人物像は高さ1メートルにもおよび、その存在感は圧倒的です。私は、1991年の銀川での国際学会で研究発表したあとで、欧米の参加者と中国を縦断して花山にまで行きましたが、同行の世界からの研究者もこれを見たいと思って、ビザなど幾多の障害を乗り越えて、今回の国際学会に来ることにしたと言っていたほどで、それは私にも共感できるものでした。この種の野外の彩画で、これほど巨大な作品は世界的にも珍しく、やはり世界文化遺産に値するものであると評価できるでしょう。制作年代を決定するのは困難ですが、銅鼓とおぼしき丸いかたちや環刀太刀と解釈できるかたちが多く描出されていることから、それが作られていた、約2,000年前という説が妥当なところでしょうか。花山に関しては、早くも1987年に中日英の3カ国語版の作品集が京都の光琳社によって出版されており、樋口隆康先生が、実見していないと断りつつ、一文を寄せておられます。20年以上前に15,000円もした豪華本で、私も何とか入手して、いつか見たいものだと憧れていたことを覚えています。なお、このあたりの先史岩面彩画の遺跡は花山だけではなく、中心都市の南寧を流れる左江という川の上流の川岸に多くの遺跡を認めることができます。
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by rupestrian | 2009-11-16 16:33 | 先史岩面画