世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian


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「画」と「絵」

マカピーです。「チャイナチャイナ」さんの書き込みを見落としていて、まことに申し訳ありませんでした。一方的に書いているだけで、まだまだ不慣れなところはご容赦ください。
その書き込みから改めて考えましたので、またまた用語の問題にこだわってみたいと思います。11月の90分版の放送はまだもめていて、「岩面画」を少しは使っていただくことになったようですが、まだまだ「岩絵」への執着は強いようです。しかし、中国や朝鮮半島でRock Artを「岩画」と訳すのは理由があって、「画」はえがいたもの一般を指し、「絵」は色彩を用いてえがいたものだけを指す文字です。ですから、「岩絵」はあえていえばRock Paintingsの訳語でしかなく、極めて限定的です。この意味の違いは、もちろん漢語文化圏では当然のことであり、それこそ「岩面刻画」を「岩絵」などと呼ぶのは、無知の産物でしかないのではないでしょうか。もちろん、言葉の意味には変遷があり、今私がそうだと思えば、どんな言葉遣いをしてもいいのだ、という主張もあるかもしれませんが、やはり、学術的な見地からは、伝統的な言葉遣いを尊重することからすべてが始まるのではないかと思いますので、ここまで要らぬことを書いてきた次第です。
下の写真は私たちがもうすぐ訪問する中国・寧夏回族自治区の賀蘭山遺跡の「人面」とも解釈される岩面刻画です。
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by rupestrian | 2009-09-29 13:35 | 先史岩面画

ICOMOS-CAR

マカピーです。「社長」のコメント、ありがとうございます。このブログは一応公開しているということで、皆さんもニックネームで参加してくださいと、先にお願いしましたが、実際は、閉じられたままですので、実名でもよろしくご投稿いただきますようお願いいたします。国際学会というものをのぞいてみたいということでしたが、ほとんどの出席者がいくつもの研究発表をするのが普通であり、ぜひ、1年間をかけて、ひとつでも発表の準備をしていただきますようお願いいたします。ちなみに、来年の学会の公用語は、フランス語と英語に加えて、ピレネーの向こう側のスペイン語の3つです。
さて、IFRAOとは違う国際組織に、ICOMOS-CARというものがあり、私たちのグループはその日本支部という位置づけもしていますので、それにも言及しておきます。International Council on Monuments and Sites(国際記念物遺跡会議)というユネスコの学術諮問機関があり、最近話題の世界遺産の文化部門の評価なども担当しています。近頃、平泉の登録を認めなかった機関であり、日本では悪役っぽい感じですが、まあ、学術的に冷静な視点も必要だろうとは思います。ICOMOSの中には多くの国際学術委員会があり、岩面画もその重要なひとつです。なぜかフランス語のComité d'art rupestre(岩面画委員会)の略語がCARであり、総称して、ICOMOS-CARといいます。私と「ジャンヌ」さんはそのメンバーであり、また、日本国内委員会というものもあり、そこのメンバーでもあります。そのホームページがありますので、ご覧ください。私たちのグループであるICOMOS-CAR-JAPONのことをpdfファイルに「ジャンヌ」さんが書いていただいています。下の写真は例によってアルタミラ洞窟の大天井画のビゾンであり、この遺跡は早くも1985年に世界文化遺産に登録されています。

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by rupestrian | 2009-09-28 18:38 | 先史岩面画

IFRAOの大会

マカピーです。そろそろ来年の国際学会の案内が出回りはじめました。IFRAO(The International Federation of Rock Art Associations、「国際岩面画団体連盟」とでも訳せるか)という組織があり、世界の岩面画研究団体が団体として参加しています。毎年参加団体の一つが主催して国際学会を開催しており、ことしは7月にブラジル・ピアウイ州のサンライムンド・ノナトという町でありました。私も過去に3度行ったことのあるフィールドでしたが、今回は残念ながら出席を見送らざるをえませんでした。
そして、欧米でもバカンスが終わりつつあり、来年の案内がインターネットに出回りはじめました。発表を募るためのものですが、そろそろ、世界中で、1年後の来年9月に研究発表するための準備をしてほしいという趣旨でしょう。たとえば次のページです。
http://mc2.vicnet.net.au/home/pawc/web/index.html
この学会は英語で「Pleistocene Art of the World Congress 2010」というもので、9月6日~11日までフランス南部のピレネー山麓にあるタラスコン・シュル・アリエージュという町などで開催されます。主な会場はその町の近郊にある「先史公園」で、下の写真は、その入り口付近の様子です。私たちも、来年はこのあたりに調査に行く予定ですので、できれば、学会にもからめて予定を立てられればと考えているところです。皆さんもぜひ研究発表をしていただきたいと願っております。なお、上記の「Pleistocene Art」というのは「更新世美術」と訳せる言葉ですが、ここでは、「先史美術」という意味ぐらいにとらえた方がいいような気がしております。
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by rupestrian | 2009-09-25 16:52 | 先史岩面画

岩面画とそれ以外

マカピーです。休日ですが、用事があって学校に来ました。
ずっと岩面画という用語にこだわっていますが、もう少しわかりにくいかもしれませんので、今日は岩面画ではないものを示してみましょう。下の写真は朝鮮半島南東部の蔚山市近郊の川前里(チョンジョンリ)という岩面刻画遺跡の一部分で、何が写っているかよくわからないのですが、実は漢字が刻まれています。そして写真の下の方に直線的なものが見えていますが、これは漢字を刻む前に岩面を平らに研磨した部分の境界線です。つまり、文字を刻むためには、自然のままの凸凹した岩面ではだめであって、人工的な場所を必要としたということを意味しています。罫線が刻まれている部分さえあるほどです。一方、岩面画は、人工的に加工された場所には決して制作されることがなく、この点が一番肝心なところです。それで、よく質問されるのですが、奈良県の高松塚などの壁画古墳は、人工的に構築されたお墓という場所に制作されているので、岩面画ではありません。こんな細かいことにこだわってどうするのかというご批判もあるでしょうが、学問とはこういうトリビアなことを峻別することで始まる、と改めて記しておきたいと思います。今後も、折に触れて、こういう原理的な問題も考えたいと思っております。
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by rupestrian | 2009-09-23 15:46 | 先史岩面画

岩雕

マカピーです。連休中ですが、特にどこにも出かけていませんので、書き込むことにします。
タイトルの「岩雕」は台湾での「岩面刻画」を指す用語です。下の写真は、昨年、台北を訪れた際見学した、郊外の十三行博物館で開催されていた特別展の入口です。「岩雕」と「岩画」が併置されていて、用語の揺れが認められます。これは推測にすぎませんが、「岩雕」はRock Engravingを訳したもので、「岩画」は前に書いたとおりRock Artの直訳であり、ここにも、欧米発の学問分野の問題がかいまみえます。私も不明にも、台湾で「岩雕」という用語が一般的であることを知らず、高雄県萬山岩雕遺跡に関する情報を十分に得られなかったという弊害がありました。今後、何回か書いている漢語圏における用語の統一問題をどう克服してゆくかが我々皆の課題となるでしょう。
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by rupestrian | 2009-09-20 17:34 | 先史岩面画

岩面刻画という用語

マカピーです。昨日に引き続き、用語について書きたいと思います。まあ、いろいろなご意見をいただければ幸いかと願っております。
下は北海道余市町にあるフゴッペ洞窟の主要な作品のモノクロ写真ですが、非常にシャープな輪郭線が印象的です。これほど深く鋭くえぐられた作品は世界的にも珍しく、この遺跡の共同研究から始まっている我々のグループも誇っていいのではないかと、私自身、専門的に学ぶ者として評価しています。この、色を主たる技法としていない作品を、長らく私は「岩面刻画」と呼んでいて、これは、かなり定着しているのではないかと自負しております。英語でRock Engravingの訳語として使い始めたのですが、その後世界的な用語法の見直しがあって、この写真のような作品はPetroglyphに統一することになりました。この時点で、たとえば朝鮮半島でそう訳されているように「岩刻画」と変更することもできたのですが、前の項目に書きましたとおり、「面」にこだわる者として、そのまま「岩面刻画」を残した次第です。それで、Rock Engravingの訳語は「岩面線刻画」としました。これは、たとえば、ヨーロッパの洞窟壁画などで、石器で一度のストロークにより、表面を線として取り除いて、岩の内部の白っぽい色で輪郭線などにした作品を指しており、まさに「線刻画」といっても、かえって正しいのではないかと、私自身は考えています。Engravingは元々は版画の用語であり、鋭い線刻が特徴です。
このように用語にこだわるのは、研究者の悪い癖ではありますが、まあ、アカデミズムというものはこういう些末主義から始まるのだ、ということをご理解いただければ幸いです。結果的に、同じ漢語文化圏で、用語の齟齬を来しているわけで、既にそれぞれの国で定着しているのも確かですが、できれば、私の用語法で統一していただければと、願っております。
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by rupestrian | 2009-09-18 16:31 | 先史岩面画

「岩絵」の問題

マカピーです。しばらく、用語に関し厄介な問題があって、更新できませんでした。何度も書きますが、エジプトの論文を仕上げて、改めて用語の問題が気になって、NHKの担当者に11月の放送では、教育チャンネルということでもあるので、「岩絵」ではなく、「岩面画」の方がよいのではないかと提案してみたのですが、どうも手応えはあまりよくありません。
小さなことのようですが、会の名称にも関わりますので、以下、少し長くなりますが、こだわってみたいと思います。そもそも、このブログのアドレスにはrupestrianを用いていますが、これは先にも書いたとおり、「岩の面の」という意味の、よほど大きな辞書でもない限り載っていない英語であり、元々はフランス語などのラテン語系の言葉です。フランス語で「岩面画」は「l'art rupesre」であり、それがアングロ系の言語に訳されたときに、英語では「rock art」と単純化されてしまい、それがそのまま漢字圏の中国語などで「岩画」という言葉になったのだろうと思います。「岩絵」もおそらく、英語からの「直訳」的な言葉であり、対象の重要な側面を見落とした、不十分な用語であると、専門的に学ぶ者としては、常に問題意識を持っていました。やはり、下の、アルタミラ洞窟の天井画に見られるとおり、「岩」の不規則な形状の「面」に制作されたことそれ自体がまさに本質的なことであり、類似のものも含んで何でもありというのではなく、厳しく峻別してゆきたいと考えています。
NHKをはじめとするマスコミなどがなぜ「岩絵」という用語を好んで使うのか、その理由はわかりません。それは日本語の辞書にも載っていない言葉であり、(「岩面画」や「岩壁画」は載っている)俗称というしかありませんが、多分、言葉の音の響きが快いからかもしれません。これはこれで結構な研究対象の問題になるかもしれません。
以上、鬱陶しいことを書いてきましたが、切にご容赦ください。ここから派生する他の用語についても、追い追い書いてゆきたいと考えています。

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by rupestrian | 2009-09-17 11:51

訂正とお詫び、と女性像

マカピーです。昨日「ディアブロ型人物像」のことを書きましたが、正しくは「ディアボロ型人物像」の間違いで、訂正いたします。送付した論文には正しく書いていたのですが、どうも気がゆるんでしまったのか、「ボ」を「ブ」とするなんて、とんでもない間違いをしてしまいました。お詫びしますと共に、今後このようなことのないように注意したいと決意していますので、これに懲りず、アクセスしていただきますようお願いいたします。
下の写真は、やはりフォッギーニの作品で、人物像が上下逆に表現されています。これが現場での正しいポジションで、作者たちの姿勢がどのようだったか、気になるところです。面白いの腰の部分に数本の垂直線が引かれていて、腰ミノと解釈できます。また、脇から乳房が出ていて、「女性像」であると確認できます。もちろん全くリアリズムではありませんが、最小限の表現で伝えようとする作者たちの心意気が伝わってくるようです。
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by rupestrian | 2009-09-13 00:39 | 先史岩面画

ディアブロ型人物像

マカピーです。論文が手を離れて、ちょっと安心して、昨日は書きませんでした。それで、漫然とテレビを見ていたら、大道芸人の方が出ておられていて、「ディアブロ」という道具を使った技を披露されていました。下の写真は、やはりエジプトのフォッギーニ岩陰の作品ですが、このように、腰の部分が細く絞られて、上下の胴体と大腿部が太く表現されている人物像を、先史岩面画研究では伝統的に「ディアブロ型人物像」と称してきました。「ディアブロ」とはあえて日本語にすれば「空中独楽」となり、両手に棒を持って、その2本の棒の両端にひもが付いていて、そのひもに「ディアブロ」をからめて、いろいろと超絶的な技を見せるものです。うまく説明できませんが、これまでは、この種の、実は世界中に分布している人物像のタイプを「ディアブロ型人物像」と呼びつつ、その言葉の由来まで、なかなか解説できなかったのを歯がゆく思っておりました。皆様はとっくにご存じだったかもしれませんが、私は上のテレビ番組で、初めて「ディアブロ」が日本語として通用していることを知り、ほっと安心した次第です。どうしても、他の諸科学同様、ヨーロッパで展開してきた学問分野ですので、用語もなかなか日本ではなじみのないものもあり、これをどうかみ砕いてゆくかも、先史岩面画を調査研究するもののつとめだろうと思います。この場合は、「ディアブロ」が日本で定着したようなので、これからはただ「ディアブロ型人物像」といえばいいのだろうと、安心しておりますが。
ところで、このような人体を極端に変形して表現する伝統は、先史岩面画には普通のものであり、「ディアブロ型人物像」は、従来の年代観でいえば、比較的新しい時期のものになりますが、フォッギーニでは、先の黄色のダイナミックな「スティック・フィギュア」に次ぐ古いもののように、私の現地の観察からは判断できますので、これをどう考えるかも難しいところです。おそらく、他のところで成熟した制作伝統がそのままこの遺跡まで来て、これらを表現したのではないかとも考えられますが、もちろん、もっと考察を進めなければなりません。いずれにしましても、このようなリズム感もまた先史岩面画の魅力の一つだと感じておりますので、少し長くなりましたが、名称とともに紹介させていただきました。
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by rupestrian | 2009-09-11 16:21 | 先史岩面画

論文送付

マカピーです。やっと論文が仕上がり、編集担当に送りました。それで、ほっとして、こちらに書いています。まあ、報告にすぎないもので、論文と名乗るのはおこがましいのですが、やはり、はじめて行ったところに関し、何かを書くというのは、無理があるなあ、と反省しております。メンバーの皆さんは、枝幸でご発表いただきましたが、うまくまとめておられて、今更ながら敬服しております。
さて、今回扱ったフォッギーニ岩陰は、世界的にも珍しいほど作品が密集していて、本当に様々なタイプが発見できます。下の写真では、あまりはっきり見えないかもしれませんが、濃い黄色で棒状の人物像が描かれています。見た目のリアリズムではありませんが、人間ならではの運動感が見事にとらえられていて、こういう造形があるのも、先史岩面画の魅力の一つではないかと私は考えております。決して目立たず、あまり取り上げられることもないでしょうが、視角だけではなく、五感をフルに稼働させて、自分の動きをとらえようとした作者の存在が、思い浮かべられて、とても興味深く思っております。
今後は、少し余裕ができましたので、できるだけ毎日、岩面画そのものについても、書ければと思っているところです。
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by rupestrian | 2009-09-09 19:24 | 先史岩面画