世界各地の先史岩面画に関心を抱く皆さんとの情報交換を行う場です。
by rupestrian
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銀川世界岩画館

マカピーです。留守中に届いていた、私も会員である学会の雑誌であるAustralian Rock Art Research Vol.26 No.2 に陳兆復先生が短い記事を書いていましたので、紹介します。例の銀川世界岩画館がオープンしたとの報告で、下にモノクロ写真ですが、転載することにします。なお、クレジットはLiu Yongpingとなっていますので、ご一緒した劉さんではないかと思います。今や懐かしいともいえる館の前の階段に多くの人が集まり、その中央には「~岩画」と書かれた垂れ幕が、まさに故宮でも見た、皇帝の通り道としてあった龍の浮き彫りのごとく、敷かれていて壮観です。記事に寄れば、敷地面積72,000平方メートル、建物面積4,106平方メートル、展示区域面積2,000平方メートルと、その広大さが強調されています。中国の勢いがここにも感じられるようです。
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by rupestrian | 2009-10-30 17:28 | 先史岩面画

中国から戻って

マカピーです。中国から昨夜遅くに自宅に戻り、今日は早速授業でした。まだ、疲労感もありますが、今は、充実した調査行になったのではないかと、満足しているところです。これからしばらく、この場でも中国にこだわって書いていきたいと思っていますが、まずは、今回見た作品で、私が一番印象に残ったものを紹介することにします。下の写真は、寧夏回族自治区西部の中衛という町の北の山地にある「大麦地(ダマイヂ)」遺跡の一例ですが、左下から右上に傾いている岩の表面に、条理に沿って、2、3列に動物像が配置されていて、リズミカルな感覚にあふれています。かたち自体は写実的とはいえませんが、輪郭線がシャープに刻まれていて、爽快感も味わえます。小さいのでわかりにくいかもしれませんが、白っぽい硬い表面に、微妙な力加減で打撃を与え、割るように岩をはがして、下のより濃い色の部分が図になっています。この部分には、他の時期に制作された作品との重なりなどもなく、美術作品としても、味わえるクオリティを持っているのではないかと思います。他に重要な作品もあるかと思いますが、まずは、このような作品を見るために色々と段取りを重ねて、どんなところにでも行ってるのではないか、と振り返っているところです。
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by rupestrian | 2009-10-29 17:50 | 先史岩面画

いざ、中国へ

マカピーです。先ほどまで授業をしていて、このあと夕方から関空に向かい、明日には中国に旅立つ予定です。日本先史岩面画研究会の共同現地調査のためですが、計9名が、中国の北部、寧夏回族自治区の遺跡を見学することになっています。私自身は10数年前に、銀川という町で開催された国際学会で研究発表したことがあり、その際、近くの遺跡で作品も見せていただきました。今回も、2度目のところもありますが、初めての遺跡もあり、楽しみにしています。そこで撮った写真などはまたこの場でもお見せできると思いますが、下の写真は、前に行ったときのもので、「仮面」とも解釈されるかたちなどが現れています。中国現地でこのブログを更新できるかどうかわかりませんが、できればホットなトピックを紹介できればと願っています。まあ、帰国後には、ネタも多くできて、より充実したページになるのではないでしょうか。
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by rupestrian | 2009-10-16 15:22 | 先史岩面画

イギリスの「地上絵」

マカピーです。前回「地上絵」がイギリスにもあると書きましたが、それは下の写真のようなものです。見学した日がずっと雨模様で、写真もピントが合っていませんが、あえて臨場感を出すために、ここに掲載することにします。日本でも、スコッチ・ウィスキーのコマーシャルに用いられていることがあり、ご覧になったこともあるかもしれませんが、斜面の牧草を取り除いて、下の真っ白なチョーク質の土を露出させて「図」の部分にしたものです。周りの緑が「地」の役割を果たしていて、巨大な「ホワイト・ホース」が出現しています。これで長さ数十メートルで、この規模の作品が、イギリス中部のウィルトシャー州(ストーンヘンジの北の方が中心)にいくつもあります。制作年代は数百年前ということで、それほど古くありませんが、先史時代からの伝統が常に更新されていると考えてもいいでしょう。これも、自然の地形の表面に、その一部を取り除いて、かたちを作り出しているという点で、まさに、広い意味での「岩面画」の一種であり、そういう点からは、前回使った「地上画」よりも、「地面画」という方がいいかもしれません。さらには、その規模を勘案して「大地画」もありうるでしょうが、いかんせん、その定着は難しいことでしょう。このような造形現象は世界中にあり、まさに、私たちの研究対象は無尽蔵といってもいいほどかもしれません。
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by rupestrian | 2009-10-13 13:54 | 先史岩面画

「地上絵」と「地上画」

マカピーです。10月に入って、後期の授業が始まり、このページの更新も滞ってしまいました。ずっと気になっていたのが「地上絵」という用語で、これは日本語として完全に定着し、私自身もそのまま使ってきておりました。しかし、その英語はGeoglyphであり、まさに岩面刻画Petroglyphに類していることを指摘しなければなりません。つまり、地面を刻んで、画像を制作したのがGeoglyphであり、このページで一貫して主張している事からも、「地上画」と訳すべきだと思いますが、いかんせん、既に「誤訳」が定着している場合はどうすればいいのか、悩ましいところです。
下の写真は、私が30年近く前にペルーのナスカでセスナ機から撮ったもので、元々斜面に制作されていて、地上からも認識可能なため、具象的な人物像が表現されています。真っ平らな砂漠に制作されているものは、幾何学的に転写可能な像や図形であり、その方がナスカの「地上絵」として有名でしょう。問題は制作技法で、陽光で焼けて濃くなった表面の土を取り除くと、したのより薄い色合いが露出して、それが輪郭線などの役割を果たす事になります。これは、まさに岩面刻画と同じ技法であり、そういう点で、同じような用語法があるのだろうと思います。Geoglyphの場合、技法は同じでも、あまりにも規模が大きすぎるため、別物と認識してしまいますが、本来は同じものであると言っても間違いではありません。Geoglyphは砂漠や山の斜面という大地を支持体にして、展開された人類の壮大な芸術であり、その存在意義を軽視することはできません。先に紹介しましたチリ・アリカ近辺のGeoglyphは、山の斜面に制作されている具象的な作例ですが、技法が少し異なって、大きな石を置き、それを連続させることでかたちとしています。また、イギリスGeoglyphは山の斜面の牧草を取り除いて、下の真っ白いチョーク質の土の色を見せるという技法です。他にもアメリカ合衆国にもありますし、世界的な造形現象であるといえるでしょう。
私も先史岩面画を専門に学ぶ者として、大いに関心はありますが、まだまだ余裕がなく、傍観しているだけです。現在は、その制作動機や意味内容に関心が持たれていて、それこそトンでもない議論もまかり通っている気がしますが、できれば、より根本的な造形原理も探求されるべきではないかとも思っております。
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by rupestrian | 2009-10-09 16:09 | 先史岩面画

チリの岩面画

マカピーです。先日、急に大学のかなり年下の後輩からメールが来て、その友人の妹である牛田さんという方が今海外青年協力隊員としてチリ中北部の小さな町にいて、観光開発を担当しているとの話がありました。牛田さんご本人からもメールが届き、町の近辺に分布する岩面画を文化財としてどのように位置づけたらいいのか、そういうアドバイスができる研究者を紹介してほしいとの事でした。私は30年も前に、フィールドのボリビアからペルーに移動する際に、チリ北部をかすめて通り、最北端のアリカという町に滞在して、その近辺の山の斜面に表現されている大きな「地上絵(「地上画」と訳すべき)」を見学したことがありました。全く面識のない、まだ若い方がチリで自分の仕事に奮闘されていて、現地でもあまり顧みられていない岩面画を観光資源としても取り上げたいという意欲にふれて、はるか昔のことも思い出した次第でした。
しかし、ノスタルジーにふけっているヒマもなく、私も残念ながらチリの専門家を知らないので、国際学会で親しくしなった、アメリカ合衆国・アーカンソー中央大学のモラレスという若い研究者にメールを書いたところ、ブラジルとペルーをフィールドにしているが、チリ中北部のアタカマ地域にも関心を持っていて、いつでも相談してほしいという、好意的な返事が届きました。今後は、牛田さんとモラレスのやりとりの中で、何らかのプロジェクトが進行していくことでしょうし、その推移を見守りつつ、いずれの日か、機会があれば、ほぼ地球の裏側の作品も見に行きたいものだと思いました。
このように、岩面画というものを専門にしていると、わずかな縁でも、世界各地の情報が寄せられることがあり、今回のように、岩面画を地域振興のきっかけにしたいというような若い皆さんの熱意にふれると、私も大いに力づけられる気がして、がんばろうと決意を新たにしました。下の写真は牛田さんから送っていただいた画像の一枚で、わかりにくいのですが、そこかしこに、独特なかたちの人物像の彩画が認められます。他にも刻画も多くあり、またこの場でも紹介してゆくつもりです。
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by rupestrian | 2009-10-05 11:55 | 先史岩面画

シャーマニズム解釈の問題点

マカピーです。鬱陶しい話題に終始しましたので、少し気分を変えたいと思います。最近、遅ればせながら、『異次元の刻印:人類史の裂け目あるいは宗教の起源』(バジリコ株式会社)というご大層なタイトルの本を読むことができました。1年前に出版されたのですが、これまで筆者がグラハム・ハンコックという『神々の指紋』で有名なトンでもない人物で、ちょっと手が出ませんでした。この人はフゴッペ洞窟にもやってきて、担当者(モンゴル太郎氏)に、岩面刻画の制作年代がもっと古くならないかと執拗に尋ねたそうです。ハンコックは、先史岩面画にも関心を持っているようで、今回の本も、フランスのペシュ=メルル洞窟訪問記から始まっています。しかし、次いで引用するのはDavid Lewis-Williamsの本であり、そこでは、シャーマニズム解釈が展開されています。簡単に言えば、シャーマンが超自然的なパワーを得るために動物に変身した姿が岩面画に描写されているという考え方で、それは、シャーマンが動物に変身する途中の半人半獣像の存在でも明らかであるというのです。この理論の背景には大脳生理学的議論もあり、かなり難しいところもあります。しかし、近年の積極的な岩面画解釈として一定の影響力を持っており、逆に反論の本も出版されています。
このシャーマニズム解釈をハンコックが引用するというのは、この仮説の怪しさを顕わにすることにもなり、Lewis-Williamsも迷惑かもしれません。しかし、危うい議論であることには違いがなく、私個人としては妥当な展開であろうとも思っています。
Lewis-Williamsの本は今、日本語にも翻訳されているところであり、いずれ出版されることでしょう。この翻訳のイニシアチブは中沢新一氏がとっており、その著書『芸術人類学』(みすず書房)などでもLewis-Williamsの説が詳しく紹介されています。まあ、洞窟壁画をはじめとする先史岩面画の解釈は多くの人々の関心事であり、今現在のトレンドが脚光を浴びるのはいいことだろうと思いますが、それを真に受けるのではなく、批判的に検討することが必要でしょう。
なお、今回は出版物を紹介したということで、写真は省略します。
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by rupestrian | 2009-10-01 17:07 | 先史岩面画