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「最古」論争
ブログを再開して1週間たちましたが、まだ習慣化していないので、更新が滞ってしまいます。日本では、オウム関係など、大きなニュースがあり、40,800年というデータが出たことはほとんど報道されなかったのが残念ですが、もちろん、世界的にはScienceの表紙を飾った論文ですから反響も大きく、様々な問題が提起されています。そのすべてをフォローしているわけではありませんが、まずは「最古」という形容に関する論争を紹介したいと思います。今回「最古」という言葉が印象的に用いられたわけですが、もっと古い芸術が多くあるという議論が展開されたわけです。年代の問題は、今回のウラン系列による測定法に対する信頼性など、きわめて微妙であり、論者によって様々に扱われていますが、いずれにせよ、きわめて古い時代の人間の造形活動に関心のある研究者たちは、私もその最たる者ですが、「最古」すなわち「最初」の芸術という表現に敏感に反応するわけです。
問題はこれが芸術かどうかということであり、私自身は、人間の手の自働的な反復運動の産物とみなし、芸術であるとは考えておりません。芸術が、ブロンボスのような非具象的なかたちから始まるのか、それとも洞窟壁画の迫真的な動物像など具象から生まれたのかは、それぞれの研究者の芸術観にも関わる、決着のつかない問題かもしれませんが、私自身はリアルな動物像がどういう原理で制作されているのかを、従来から中心的な課題としており、ブロンボスの直線は、質的にも異質な事例と位置づけています。今回のデータでは、41400±570の赤い円盤が「非具象」、37,630±340の手形が「実物の転写」ということで、「最古」の具象的動物像としては、エル・カスティージョの黒色による動物像輪郭線の断片が22,800±270ということで、私の研究者としての「常識」の範疇にとどまっていて、まだ安心できる気がします。 「最古」の芸術とは何か、これはまさに芸術の定義の問題でもあり、簡単には答えが出ませんが、今回のScienceの論文が、こういう根本的なテーマを照らし出してくれただけでも、意義深かったといえるのかもしれません。以上、腰砕けな結論ですが、これからもできるだけ頻繁に書き込んでゆくということで、お赦しください。 #
by rupestrian
| 2012-06-21 16:51
| 先史岩面画
洞窟壁画・最古の年代で再開します
この場所に最後に書いたのは2年半近く前で、再開するのもどうかという気がしていましたが、本日大きなニュースが入ってきましたので、これをきっかけに、これからはゆったりと、週一くらいのペースで投稿できればと思っています。日本先史岩面画研究会の共同研究による活動は、この3月で4年間にわたった科研が終わり、一段落しましたので、これからは、このブログを維持することで研究会活動の一端にしたいと考えております。
さて、昨日、ある新聞社から電話があり、Science6月15日号に出る論文に関し質問されました。ウランを用いた年代測定で、スペイン北部のエル・カスティージョ洞窟の「赤い円盤」から41,400±570というきわめて古いデータが出たという論文です。これまでは木炭などの有機物からしか年代測定できなかったのですが、この「ウラン系列年代測定法」では、原理の詳細は割愛しますが、作品制作後に生成した鍾乳石の年代が測定できるので、これまで年代のわからなかった赤い顔料による作品も測定できることになります。同じ洞窟の手形からは37,630±340というデータも出ており、驚くべき古さです。有名なアルタミラ洞窟、大天井画の部屋の、少し保存状態のよくない部分のウマの輪郭線からは、22,110±130という数値が得られ、これは従来考えられていたよりも7,000年以上古い年代で、これをどう解釈すべきか悩ましいところです。科学的年代測定法を専門にしていない立場から放言するなら、今回のデータは7,000年ほどの誤りがあり、エル・カスティージョの赤い円盤も34,000年前とするなら、まだ納得できるところかもしれません。これでも、今まで最古とされている南仏ショーヴェの32,000年よりも2,000年も古くなり、驚くべきニュースとなります。 もし、41,400年という年代が正しいのであれば、もっと重大な問題が提起されてしまいます。従来、洞窟壁画の担い手であるホモ・サピエンスがヨーロッパ西部に到達したのは約40,000年前頃と考えられており、今回の論文の末尾でも示唆されているとおり、その前から居住していたネアンデルタール人が作者の可能性も出てくるということです。抽象的な形態であろうと、象徴的な表現行為はホモ・サピエンスに限られているという説が有力であり、もし、ネアンデルタール人が赤い円盤を制作したとを認めるなら、大げさに言えば、人間とは何かという大きな問題にも関わってしまうのです。今回の論文では、ホモ・サピエンスのヨーロッパ西部への到達を41,500頃と見積もっており、ぎりぎりホモ・サピエンスの関与も考えられなくはない、微妙なところです。私は、芸術学を専門とする研究者として、芸術をホモ・サピエンスに固有なものであるという論陣を張っており、今回の論文を深刻に受け止めざるを得ません。 以上、新聞社からいただいた、雑誌発行前に報道機関に提供された論文からの第一報として書きました。今後もこの場で、この問題を追及し続けたいと思っていますので、コメントなどよろしくお願いいたします。要約は下記をご覧ください。 http://www.sciencemag.org/content/336/6087/1409 この写真は私が1992年に訪れた時に撮ったエル・カスティージョの写真で、左側の格子の向こうに洞窟の広い入り口部分があります。 #
by rupestrian
| 2012-06-15 14:54
| 先史岩面画
サハラ砂漠の花
マカピーです。そろそろ1月も終わりというのに、今年になって、まだ2度目の投稿です。もはや風前の灯火ですが、細くとも長くやっていければと願っているところです。
昨夜は、NHK教育テレビの「ETV特集」で、昨年5月に放送された、サハラ砂漠の先史岩面画遺跡の番組の拡大90分版が放送されました。ご覧いただいた方も多いかと思いますが、まあ、出演者としては、手放しでは喜べない内容ではなかったかと考えているところです。遺跡に至るまでの道行きが長く扱われていて、それはそれで、一般的にも興味深い内容だったかもしれませんが、研究者としては、その時間に作品を紹介していただいた方がよかったのではないかと思いました。とはいいつつ、下の写真は、番組でも取り上げられた砂漠の花であり、まあ、あまりにも珍しく、かえって凶兆ではないかというおそれもありますが、こういうものに出会えるというのが、フィールドワークの醍醐味でしょう。 遺跡の作品の前では、出演者3人で様々なことを語り合ったことを思い出します。番組で使用されたのはその一部であり、もっと良いことを言っていたはずとも思いますが、それは制作者の取捨選択ですから、出演者としては何も主張できないのが残念です。とにかく、NHKの方針として、放送前に番組を、出演者を含めて部外者に見せないということで、何も介入できません。有識者の監修も求めず、それだけ、自信があるのかもしれませんが、単なる素材にすぎないともいえる出演者としては、どういう扱いをされるのか、不安なところです。今回の放送では、洞窟内部の記念写真にラスコーという字幕が出ていましたが、もちろん、ペシュ=メルルの間違いであり、勘違いによるケアレスミスも、事前に外部のチェックを受ければ、客観的な目から見つけやすくなるでしょう。 番組の評価に関しては、それこそ視聴者それぞれの判断にゆだねなければなりませんが、先のNHKスペシャルよりは、改善されているところもあるでしょう。用語に関しては、「岩絵」は使わないようにして、一度だけですが、字幕で「岩壁画」「岩面画」が紹介されたのは、評価できるでしょう。古代エジプト文明との関連づけも、かなり薄められていますが、まだまだ残っていて、まあ、同じ制作者の作品ですから、異なった視点を求めるというのも無理なところでしょう。他にも、まだまだ指摘すべき事は満載な気もしますが、それはまた次の機会に譲りましょう。 #
by rupestrian
| 2010-01-25 14:20
| 先史岩面画
テレビと先史岩面画
マカピーです。遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年も始動が遅くなり、どういうペースになるかわかりませんが、よろしくお願いいたします。さて、早くも、明日1月9日(土)の放送になりますが、午後9時からTBS系チャンネル『世界ふしぎ発見』という番組で、エジプトの先史岩面画が取り上げられることがわかりましたので、お知らせいたします。昨年2月に私も赴き、5月10日(日)にはNHK総合テレビの「NHKスペシャル」で放送された同じ場所に、民放も取材にいったということで、もちろん私はノータッチですが、どういう切り口で紹介するのか楽しみにしています。最近は、以前よりも日本のテレビで先史岩面画が紹介されることが多くなっているようで、それはそれで、有意義なことだと、専門に学ぶ者としましても、喜んでおります。先の私も出演したNHKの番組は、まあ、サハラ砂漠の先史岩面画を古代エジプト文明と結びつけようとして、無理な展開もありましたが、取り上げていただいたことをよしとして、「岩絵」という俗称を連発されても、まあ貴重な機会になったとは評価しております。明日の「世界ふしぎ発見」はより娯楽的なクイズ番組ですから、もちろんあまり期待できませんが、人気番組で扱ってもらえることで納得すべきでしょう。また、少し先になりますが、1月24日(日)には午後10時から11時30分まで、NHK教育チャンネルの『ETV特集』で、昨年5月の50分の番組の拡大90分版が放送されることになりましたので、これもお知らせいたします。先史岩面画という、ある意味地味な研究対象が、メジャーな放送に現れることだけで、これまでは満足してきたきらいがありますが、今後は学術的な質も維持していただけるよう、制作者にはお願いしてゆきたいところです。下の写真は私が撮ってきたサハラ砂漠の写真です。あえて、先史岩面画ではない画像にしてみました。
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by rupestrian
| 2010-01-08 17:39
| 先史岩面画
年の瀬に
マカピーです。どうも、ブロガーになりきれないまま、2009年も終わりに近づこうとしています。今年は、春にエジプトに行ったり、秋に中国に行ったり、初めての先史岩面画作品も見ることができ、充実した1年になったのではないかと思っております。このブログも本格的に始めたつもりですが、なかなか軌道に乗らないまま、来年はどうなるのか、自ら心配しております。著作権という、重要ではあるが、結構厄介なものがあり、基本的に自分が撮った写真しか載せられないのが、こういう美術系ブログの一つの制約とはいえるでしょう。まあ、これまでいやほど撮りためている画像がありますので、それを徐々に出していけばいいのかもしれませんが。
さて、年末に、1冊の本を読みましたので、紹介いたします。青柳正規『人類文明の黎明と暮れ方』(興亡の世界史00)講談社、2,300円(税別)という本で、表紙にペシュ=メルル洞窟の「斑点のある2頭のウマ」がデザインされて、書店でも目につくかもしれません。400ページ近い全体の、約20ページが洞窟壁画に充てられていて、まあ、それなりに取り上げていただいているという感じです。もちろん、専門に研究している者から見れば、情報の出所が限定的で、議論の不十分な箇所もあるような気がしますが、それよりは、こういう著者にも関心を持っていただいているということをよしとすべきなのかもしれません。青柳先生は、東京大学の美術史講座主任教授を長らく務められた、古代ローマ文化の専門家であり、イタリアでは実地に発掘調査もされています。日本学士院会員という、研究者としては、功成り名遂げた方であり、そういう先生が、洞窟壁画をどう捉えておられるのかというのも興味深いところです。今回も、本の紹介ということで、画像は省略いたします。 では、皆様よいお年をお迎えください。 #
by rupestrian
| 2009-12-28 14:30
| 先史岩面画
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