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芸術の起源を求めて
先日、近隣の高校で地理と歴史を担当されている先生方の会で講演する機会をいただいた。毎年この時期に研究会を開催されているとのことだが、今年の担当者が、数年前に私が出演したNHKの番組を見ていただいていて、お声をかけていただいたことから、約50名の前で、90分の話をすることになったのである。サハラ砂漠の番組で関心を持っていただいたということなので、導入ということで、フォッギーニ遺跡(下の写真)に行ったことからはじめ、先史岩面画はそれが制作されたまさにその場所に研究者が赴いて、作品の前で芸術について考え抜くことに意味があるのではないかという思いを述べた。
その後、世界各地に先史岩面画があることを紹介して、その一例として、日本にある北海道のフゴッペ洞窟を少しだけ紹介した。ここまでで、結構時間をとってしまい、本題の『芸術の起源を求めて』に関しては、十分な時間がとれなかったことを反省しなければならない。 ラスコーのいくつかの作品をじっくりと見て、アルタミラも少し紹介した後、Science6月15日号に発表されたウラン系列年代測定法への疑問などを語ったところで、時間切れとなり、適当にまとめて終えることになった。まあ、抽象的な議論を展開しないですんだのは、かえってよかったのではないかとも、自ら正当化するしかないだろう。しかし、二つの適切なご質問をいただいて、うまく補うことができたのには感謝しているところである。ひとつは「写実性」の問題で、時間中に見せられなかったスライドも使って、議論することができた。すなわち、「写実」は古代ギリシャ・ローマとルネサンス以降のヨーロッパおよびその影響を受けている近代の世界においてのみ追求されている課題であり、現在の日本でも常識と見なされているかもしれないが、極めて特殊な傾向であると認識しなければならない。その上で、洞窟壁画の「写実性」は異なった原理に基づいて実現されており、それを私は「統合」と読んでいるというような話をすることができた。それを受けて「統合」を重視するなら、「見立て」は現在では子供の方が得意なので、洞窟壁画も子供たちが制作したのではないかとという刺激的な質問をいただいた。「見立て」能力は、私の考えでは、現在でも「大人」にも失われておらず、発揮しようとしていないだけで、洞窟壁画が社会の全メンバーの参画する大きな事業であったと認識している私としては、やはり、子供たちではなく、成熟した人々が中心的な役割を果たしたのではないかと、まとめることができた。 以上、いつものパターンで、準備していたものすべてを語れず、といって、時間オーバーするのは最も避けるべきなので、いつも中途半端に終わることを反省しなければならないが、今回は質問者のフォローのおかげで、うまく終えることができ感謝している次第である。
by rupestrian
| 2012-08-27 15:34
| 先史岩面画
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