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盤龜臺(パングデ)の保存問題
このブログは、ほとんど更新できていないが、興味深い情報が入った時には、どれだけ間隔が空いていても、書き込むことにしたい。
韓国の英字新聞である The Korean Herald の5月7日発行分にパングデに関する記事が載っていたことがわかったので、報告する。パングデは日本先史岩面画研究会としても現地見学したことのある遺跡で、朝鮮半島島南部のウルサン市の内陸部に位置する。川縁の断崖に300以上とされる岩面刻画が制作され、年間の半分以上の時期が、1965年に建設された、下流のダムによるダム湖に水没しているという、世界的にも特異な状況を呈している遺跡である。水没することで、岩面刻画の制作されている岩面が劣化して、保存によくないというのはいうまでもない。1971年に近くの別の先史岩面画遺跡である川前里(チョンジョンリ)遺跡の調査の際に発見されたが、以来、その保存問題は懸案であり続けている。 ![]() 上の写真は2005年3月に研究会で訪れた際に撮ったもので、岩面刻画が完全に露出して、下には観察のための足場も確保できた。ダム湖の満水時には、この写真の画面のほぼ半分くらいのところまで水没していて、作品はほとんど見ることのできない状況となる。韓国は、パングデとその周辺の先史岩面画遺跡を2017年までに世界文化遺産に登録しようとしており、様々な活動をしている。一昨年の2011年には、発見40周年の国際シンポジウムがあり、私も招かれたが、世界各国からの研究者も、やはり水没状況を改善しないことには、登録はおぼつかないだろうと述べていた。なお、同じ2011年には、世界文化遺産に予備登録されたとのことである。 今回の記事では、朴槿恵(Park Geun Hye、パク・クネ)大統領が興味を表明したことで、パングデが国民的関心の対象となり、さらに、3月15日に長年パングデ保存運動に献身してきた邊英燮(Byun Young-sup 、ビョン・ヨンソプ)氏を文化財庁のトップに据えたことで、保存運動が具体的な議論の対象となったのである。保存運動組織は、ダム湖の通年にわたる低水位の維持を求めており、ウルサン市の行政当局は、市民の飲料水の確保のためにはダムが必要だと主張しており、その温度差は著しい。 ![]() 上の写真は、2011年10月の訪問時に撮ったもので、遺跡は完全に水没して、対岸からしか見ることができなかった。現在では、基本的には作品のある岩壁に接近することは禁止されており、100メートルほど離れたところから設置されている望遠鏡で見るしかないのである。世界文化遺産に登録するためには、ダム湖水位の低レベル維持が必須であり、まさに政治判断が必要とされているのである。一時期、遺跡のまわりに堰堤を築いて、ダム湖の水位はそのままに、岩面刻画の制作されている周辺だけ露出させるという案も検討されたが、これは環境への影響が甚だしいということで、私もメンバーであるイコモスも、その「改善策」を否定している。パングデには、世界最古とされるクジラの表現もあり、世界的も貴重な文化遺産と認められるが、それと市民の飲料水の確保という極めて現実的な問題との関係が、新大統領の下、改めて浮かび上がってきたのである。隣国の研究者としても、その動向は注視してゆきたい。なお、下の写真は、透明構造物“キネティック・ダム(Kinetic Dam)つまり、移動可能な透明ダムというもので、堰堤の一案ではあるだろう。 ![]()
by rupestrian
| 2013-06-11 15:05
| 先史岩面画
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